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「90分間プレッシングを続けることは不可能ではない」。異端の監督、パコ・ヘメスの気高き魂【超攻撃的フットボールの美学】

シリーズ:超攻撃的フットボールの美学 text by 江間慎一郎 photo by Shinichiro EMA , Getty Images

90分間プレッシングを続けることは不可能ではない

ピッチが狭いことで有名なエスタディオ・デ・バジェカス
ピッチが狭いことで有名なエスタディオ・デ・バジェカス【写真:Getty Images】

――ラージョの本拠地バジェカスは、横65×縦100メールとリーガ1部の中で最も狭いピッチです。あなたのフットボールはワイドに展開してスペースを生み出さなければならず、相性は最悪です。

P 間違いないね(笑)。我々のフットボールは広いピッチに適応するもので、実際にアウェイの方が成績は良い。一方でバジェカスは守備を固めるのが容易く、パス回しに必要なスペースを消すことが可能と、地の利は絶対的にアウェイチームにあるよ(笑)。とはいえ、自分たちのピッチに文句は言えない。バジェカスこそが我々のホームなんだ。

 狭いピッチでは、ワイドな攻撃を仕掛けられない代わりに縦への動き出しが鍵を握る。オフ・ザ・ボールの動きによって素早く相手の裏を取るなどね。しっかりと対処できればボールを保持するプレースタイルでも点を取ることは可能だよ。

――ラージョは90分間、絶え間なくプレッシングを仕掛けることができます。その秘密はどこにあるのでしょうか?

P 一つ言わせてもらおうか。試合を通してプレッシングを仕掛け続けることが不可能というのは、完全な間違いだ。90分間トランジションを続けることこそが不可能なんだよ。プレッシングはチーム全体で行うものであり、激しい労働ではあるが継続しなければならない時間は短い。プレッシングは4~5秒以上は続かず、選手が走る距離も12~14メートル程だ。

 プレッシングを機能させるためには、全選手が自分のいるべき場所にいること、注意力と共通意識を持つことが必要となる。もし3番目までの選手しかプレスにいかず、4番目がそれを怠れば問題が生まれてしまう。しかし全選手が正しい動きを見せれば、プレッシングは絶え間なく仕掛け続けることができる。

 私はそう信じているからこそ最終ラインをあれだけ高くしているんだよ。プレッシングが機能してボールを奪えれば、我々は一呼吸入れられる。疲労が溜まっているならボールを自分たちのものにすればいいんだ。パス回しで相手の疲労を蓄積させ、自分たちは体力回復に努める。それが私のアイデアだ。

(取材・文:江間慎一郎)

【中編へつづく】

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