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日本代表 8年前

ブラジル戦で見えたリオ五輪代表の守備の課題。受け身の「待つ」守備では世界と渡り合えない【坪井健太郎の視点】

text by 坪井健太郎 photo by Getty Images

「日頃どのレベルでプレーしているのか」が如実に出たゲーム

ネイマール
ブラジルの3トップのようなクオリティの選手に対してゾーン1で守ることは非常に危険【写真:Getty Images】

 中盤でブロックを作り、各選手がスタートポジションにはついているのですが、誰もプレスに行かず相手の攻撃を「見ているだけ」になっているので、守備のスイッチが入りません。ゾーン2で待つ守備がチームとしての設定であることははっきりと見えましたが、2トップ(興梠慎三、中島翔哉)と両サイドハーフ(矢島慎也、南野拓実)の前線4人がボールの出どころで誰もプレスをかけないので後ろのボランチ、DFラインの6人が予測をしてインターセプト、パスの受け手に対するアプローチをかけることが全くできていませんでした。

 守備には[誘導⇒ボール奪取]というプロセスがありますが、ブラジル戦のように「ボール奪取」が現象として出てこない場合、その原因は一般的に誘導のプロセスに問題があります。実際、ブラジル戦での日本の前線4人は相手をリスペクトし過ぎたのか、メンタル的にビビっていたのか、前線でのプレスを全くかけず「守備においてはいないも同然」の状態でした。

 例えば、守備時の日本は興梠と中島が2トップとして横並びの関係を作り、相手ボランチ(中央)へのパスコースを消すスライドを行なっていましたが簡単にボランチに縦パスを出され、ライン突破を許していました。

 そうなると日本としては(2)の設定での守備を維持できず、自陣ゴール前での(3)の守備対応を迫られる時間が長くなります。押し込まれた中でDFラインがエリア内に入り込む場面も頻発し、そうなるとカウンターをしようにも移動距離が長くなるので精度を欠き防戦一方の展開になります。

 繰り返しになりますが、その展開になってしまったのは前線でボール周辺の選手がプレスをかけず、ブラジルの攻撃における[ビルドアップ⇒前進]のプロセスでパスのタイミングとコースを全く限定できていなかったからです。その状況では後方の選手は的の絞りどころがなく、次の展開の予測もできないのでズルズル下がらざるを得ません。

 しかし、ブラジルの3トップのようなクオリティの選手に対してゾーン1で守ることは非常に危険です。33分に先制点を許すまでの日本は、ネイマールのみならず3トップの個人での仕掛け、2人組のコンビネーションプレーで4度もエリア内でのフィニッシュ局面(決定機)を作られています。

 私が決定機の回数以上に危機を抱くのが、日本はチームとしてゾーン1に押し込まれゴール前を守る(1)の守備を「嫌がっていなかった」点です。アジアレベルまでならゾーン1での時間が増えても「耐えて勝つ」ことはできたかもしれませんが、世界トップレベルの攻撃やフィニッシュの精度を考えると出来る限り自陣からボールを遠くに置くべきで、そのために世界は(2)と(1)の守備の併用をプレーモデルに組み込んでいます。

 同じような崩され方が前半からずっと続いていましたので、誰が「この状況は危ない」と認識し、ピッチ上での問題解決に向けてアクションを起こすのか観察していましたが、結論としては誰もできていませんでした。それがこの年代におけるブラジルと日本の選手の戦術メモリーの差であり、「日頃どのレベルでプレーしているのか」が如実に出たゲームでもありました。

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