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代表 8年前

イングランド代表に“ビッグサム”は適任か。「究極の夢」を叶えた成果主義監督と復興への信念を曲げた協会

text by 山中忍 photo by Getty Images

候補に挙がった3人の指揮官。協会とは対極にあるアラーダイスの存在

グレン・ホドル
候補に名前が挙がっていたグレン・ホドル氏【写真:Getty Images】

 前体制下での過去4年間に復興への収穫がなかったわけではないのだ。世代交代が進み、DFにはジョン・ストーンズ、MFにはデレ・アリ、ロス・バークリー、ラヒーム・スターリングといった技術レベルの高い若手の台頭を見た。ところが後を受けたのは、ポゼッションを捨てて後方を固め、中盤バイパスも厭わずに速攻カウンターで勝負する戦法を身上とする監督。「アラーダイスDNA」はFAが打ち出した代表復興方針の対極にある。

 パスサッカー信奉者のアーセン・ヴェンゲルがFAの第1希望だったとは言われている。プレミア歴20年のフランス人監督は、「契約満了」のモットーに従ってアーセナル残留を選んだ。候補の1人として採用面接に呼ばれたエディー・ハウも正攻法を好むが、ボーンマスでの昨季がプレミア初体験の38歳。代表への転職は早すぎる。

 それでも、国民の要望が強い母国人に候補を絞ったとしても他にまだ選択肢があった。例えば、筆者も就任を望んでいたグレン・ホドル。かつての技巧派MFはアラーダイスとは異なる攻撃志向の戦術家で、足下主体のスタイルを信条とする指導者。98年W杯で代表監督を経験済みでもある。

 だが、FAはホドルに電話で連絡を入れただけ。明確なスタイルを持たないスティーブ・ブルース(当時ハル監督)とは面接を持っても、ホドルを招きはしなかった。

 人選を任された3名体制のコミッティーでは、最もアクの強いデイビッド・ギル副会長の意見が優勢だったのだろう。マンUの元CEOが元監督のサー・アレックス・ファーガソンの助言を仰いだことは言うまでもない。アラーダイスは昔から「ファーガソン派」監督の一人。FA副会長の耳には「あの男は勝者の器だ」という推薦の言葉が届いたとされる。

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