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小野伸二が後押しした楠神順平の豪州挑戦。“ワンダーランド”で愛される存在になれるか

text by 植松久隆 photo by Taka Uematsu

個人よりもタイトルを。視線の先にはACLも

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かつては日本でもプレーしたWSWのポポヴィッチ監督【写真:Taka Uematsu】

 このインタビューの後日談。本格的に練習に合流した楠神は、7月29日の同じAリーグのブリスベン・ロアとの練習試合、後半残り15分ほどの出場で実戦デビューを果たした。今季初の公式戦となった8月2日のFFAカップ対ウェリントン・フェニックス戦では、ベンチ入りを果たしたが出場機会なしに終わり、公式戦デビューは次の機会へと持ち越しになった。

「得意のドリブルで一人かわせれば、それで局面を変えられる」と自分のスタイルについて語る楠神。「ゴールに絡み、チームの流れを変えたりというプレーをどんどん出して、チームの勝利に繋げていきたい」とも語ったが、それは、まさにポポヴィッチが彼に求めるスタイルだ。

ポポヴィッチは、ウィンガーには前の推進力に長けて、ドリブルで局面を変えられる選手を好む。昨季終了後にチームを去った元オランダ代表のロメオ・カステレンもそういうタイプだった。その意味でも、楠神が自らの持ち味を存分に発揮できれば、今後の定位置獲得もより確実なものになってくる。

「個人的にはいつも目標を立てることはしない。チームとしてはタイトルを獲りたいという気持ちでやって来た。自分自身、プロでまだタイトルを獲ったことがないので、そこを目標にやっていきたい」とタイトル奪取に意欲を見せ、その先に待つACL出場までの青写真を描いていることも否定しない。

 日本人としての先達・小野伸二、ポジションの前任者カステレン。彼らのような偉大な先駆者と同じように、自らのスタイルを貫くことで、Aリーグ随一の熱狂的な”ワンダーランド”の住人の心を鷲掴みにできるか。彼らに愛される存在となれるのか―もうすぐ29歳になる楠神順平の20代最後の決意―初めての海外挑戦は、今、始まったばかりだ。

【了】

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