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日本代表 8年前

ミラン戦術の流れ汲んだ「フラット3」。理詰めのトルシエJ。世界標準目指すも4年遅れに【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

世界に追いつくはずが4年遅れに

森岡隆三の負傷を受け、2002年W杯でフラット・スリー中央のポジションを務めた宮本恒靖
森岡隆三の負傷を受け、2002年W杯でフラット・スリー中央のポジションを務めた宮本恒靖【写真:Getty Images】

 フリーでドリブルしてくる相手には、中央のDFが前に出る「ストッピング」を行い、そのときは残りの2人は絞りながら3メートル後方でラインを止める。ストッピングを行うのは必ず中央のDF。サイドのDFがこれをやるとどういう不都合があるか、どこを守り、どこを捨てるか、すべてが理詰めである。

 非常に論理的な戦術だったのだが、見た目はかなり危なっかしかった。

 1つ手順を間違えると致命傷を負いかねない。これはミラン型戦術で回避しにくい弱点なのだが、日本のフラット・スリーはまさに背水の陣という感じだった。同時に、やられそうでやらない。

 実は、ここに最大の特徴があったと思う。水際戦術によって選手の緊張感、集中力、一体感を高める。一方で大きなスペースのあるライン裏を相手に意識させ、一糸乱れぬ組織守備で迎撃する。自国開催の2002年ワールドカップに向けて、強化は順調に進んでいた。しかし、開幕直前になって問題が浮上する。

 日本がキャッチアップした世界標準の戦術はすでに4年遅れだった。その間に戦術は変化し、淘汰されている。やられそうでやられないはずの日本の守備戦術は、そのメカニズムを熟知する相手には確実にやられる危険を内包していた。守備戦術自体は現代にも通じるものだったとはいえ、日本の場合はリスクを負いすぎていたからだ。

(文:西部謙司)

【了】

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