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知られざる韓国軍隊チームの内実。元Jリーガーが語る“入隊したからこそ分かったこと”

text by キム・ドンヒョン photo by Kim Donghyun

なぜ成績を気にしないのか?

ぺ・スンジン
横浜FCでは次期キャプテンも噂されたぺ・スンジン【写真:キム・ドンヒョン】

 この規律の中のフリーさが現在Kリーグチャレンジ(2部)1位を走るこのチームの強みなのかもしれない。チョン小隊長は肯きながら意外な発言を切り出した。「成績は気にしない」とのことだった。プロのクラブが“成績を気にしない”なんて聞いたことがない。

「もちろん1位を走るとうれしい。だが、去年10位を記録しても彼らを責めたりすることはなかった。このクラブの第一目的は選手たちのフォームを維持させるため。だから元の所属チームに戻るまで怪我せず、健康にそしてなるべくフリーにプレーさせたい。

 でも不思議なことに、自由時間を与えても選手たちが先に動く。チームトレーニングがない時にもみんなグラウンドに出てトレーニングに打ち込んでいる。それこそ彼らがプロであることの証だと思う」
  
 そしてこういう雰囲気の中で、最もトレーニングに励む選手がこのクラブにはいる。服務期間を98%消化し、除隊まで残すのはただの11日(取材した8月23日の時点。9月3日をもって除隊)。

 普通の軍隊なら力を抜いていても誰も文句を言わない時期だが、自らトレーニングに参加する。彼の名前はペ・スンジン(28)。韓国U-20代表、U-23代表などを経てきたのはさることながら徳島ヴォルティス、横浜FCなど各クラブで闘争心あふれるプレーを披露し続け7年の“知日派”センターバックだ。その彼に直撃した。

 最後に在籍した古巣の横浜FCでは次期キャプテンも噂されたペ・スンジンだ。しかし入隊のため、急きょチームとの契約を解消。その直後、仁川ユナイテッドに電撃移籍した。『プロに参戦する軍隊チームに入隊するためには27歳前に1年以上Kリーグでプレーする必要がある』というルールがあるからだ。
 
 「(そのルールがあることを)2013年の12月に知った。もちろん横浜でプレーしたかったし、クラブともすでに話が済んだ状態だったから残念な気持ちがあった」

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