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Jリーグ 7年前

磐田、“らしさ”を取り戻した名古屋戦。名波ジュビロの原点。閉塞感を打破したアクション

text by 青木務 photo by Getty Images

“恵みの期間”となった3週間の中断

「何気ないミスが多い。丁寧に出してのミスは仕方ない。でも、何気なく出してミスするな!」

 名波浩監督の声が、御殿場の空に響く。名古屋との大一番の直前、ジュビロ磐田は時之栖スポーツセンターで3日間のミニキャンプを張っていた。「戦術メイン」と指揮官は明言しており、11対11のメニューが毎日行われた。重点的に取り組んだのが、自分たちのスタイルを思い出す作業だ。

 春先にやっていたサッカーをもう一度――。原点に立ち戻るべく、チームは高い集中力で練習に臨んだ。

 残留争いという“泥沼”にどっぷりハマった磐田だが、2ndステージ中盤以降は自らの首を絞め続けていた。不用意なボールロストを連発し、それを見逃さない対戦相手に好機を作られる。ミスを犯してはいけないという気持ちが強くなると、今度は前に蹴り込むだけとなる。こぼれ球は回収できず、みすみすボールを捨ててしまう。そうした悪循環を解消する上で、3週間のリーグ戦中断は磐田にとって恵みの期間となった。

 名古屋戦の週だったこともあり、慌ててキャンプを行ったと思われるかもしれない。確かに日程は後ろ倒しになったが、主な目的はチームとしての意思統一だ。それを踏まえれば、試合直前というタイミングはむしろ良かったといえる。

 基本的に、磐田は練習を全て公開するチームである。大雑把にいえば、練習メニューに関しては“どこでやっても同じ”だ。普段の練習場だったとしても、「戦術メイン」(名波監督)のトレーニングは行われていたのではないか。環境を変え、共同生活をしたことで期待したのは、メンタル面でのリフレッシュと互いの理解を深めることなど、ピッチ外でのコミュニケーションだった。

 もちろん、ピッチ外で図った意思の疎通がピッチ内でのパフォーマンスに繋がったのは間違いない。御殿場での3日間の成果は、豊田スタジアムで確かに発揮されたのだから。

 前半は不安が残る内容だったと述べたが、その中でもボールの回りはこれまでと比べてスムースだった。

「センターバックが持った時に、相手が少し引いてくれたというか。自分たちが繋ぎやすい状況だった」

 トップ下でスタメン出場し、後半途中からはボランチにポジションを移した川辺駿は言う。また、松浦も「相手があまり前から来なかった」と述べた。名古屋は前線から圧力をかけるのではなく、センターライン付近からプレスを開始することが多かった。そのため、磐田の最終ラインはストレスなくボールを動かすことができた。

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