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モウリーニョ、古巣凱旋で受けた「屈辱」。敵将コンテによる“煽り”と過去最悪の大敗

text by 山中忍 photo by Getty Images

6年前とは違うファンの心境。マンUには「モウリーニョ色」見られず

コンテ
観客を煽ったチェルシーの現指揮官、アントニオ・コンテ【写真:Getty Images】

 但し、モウリーニョ自身が感情を抑えて試合に臨んでいたように、ホームの観衆も感傷的にはなっていなかったようだ。試合前にテレビやラジオで見聞きするチェルシーファンの様子は、1度目の退任後にインテル指揮官として帰還した2010年とは違っていた。

 モウリーニョのチームらしいインテルにしてやられたCL対決(0-1)でのことだ。当時のチェルシー指揮官は、現任のコンテよりも格上のカルロ・アンチェロッティ。そのアンチェロッティでさえ、試合後には「やはりジョゼには及ばない」と言われ、ファンはモウリーニョを恋しがった。

 ところが今回は、敬愛の念は持ち続けていても未練はないように感じられた。国内ライバルを率いての帰還ということで、「敵将」とみなしやすい部分もあったに違いない。

 チーム自体も昨季までのチェルシーとは一線を画し始めた。3バックの基本システム化、ダビド・ルイスの買い戻し、ビクター・モーゼスのスタメン定着、エデン・アザールの攻撃注力、セスク・ファブレガスのベンチ降格など、モウリーニョ時代では考え難い要素は多い。

 昨季前半に鞭が入り過ぎたアザール、ジエゴ・コスタ、ネマニャ・マティッチらの主力には、前監督を見返したいというモチベーションもあったのかもしれないが、各自が再びやるべきことをきちんとできるようになったチームでは、3-4-3システムへの変更後の3連続無失点勝利で「コンテ色」が押し出されてきた。

 一方、マンUには全く「モウリーニョ色」が見られなかった。特に、基色となるべき守備面で選手が仕事をしていなかった。キックオフから僅か30秒で拙守による失点。これでは、前節リバプール戦では堅実な1ポイント獲得を可能にした、事実上6バック状態の戦術も何もあったものではない。

 その後の失点も守備のミス絡みで、ポゼッションでは56%と相手を上回っても4点差の敗戦。この負け方こそが、モウリーニョに最も「恥」を感じさせたのではないだろうか?

 先制された場面では、ダレイ・ブリントとクリス・スモーリングがペドロ・ロドリゲスに付けず、ダビド・デ・ヘアまで無謀にゴールマウスから飛び出してきた。CKからの2失点目は、アントニオ・バレンシアのクリアが不十分だったと言えなくもない。3失点目ではフアン・マタとバレンシア、4失点目ではポール・ポグバとアンデル・エレーラが、それぞれアザールとカンテにプレッシャーをかけようとさえしなかった。

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