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Jリーグ 7年前

名波ジュビロ、指揮官がMVPに挙げた大井健太郎。古巣復帰初年度、守備の要が示した存在感

text by 青木務 photo by Getty Images

不在時に痛感する存在の大きさ

大井健太郎をチームのMVPに挙げたジュビロ磐田の名波浩監督
大井健太郎をチームのMVPに挙げたジュビロ磐田の名波浩監督【写真:Getty Images】

「MVPね、誰かな。やっぱり健太郎かな。(2ndステージ第11節)神戸戦でいなくなった後半や(同14節)新潟戦の終盤とか、アイツがいたら何とかなったんじゃないかというゲームがあったからね」

 最終節でベガルタ仙台を下し、磐田はJ1残留を自力で決めた。オフを挟んで練習を再開した日、指揮官は今シーズンのチームMVPに大井の名を挙げた。この2試合は試合終盤に勝ち越しゴールを奪われ、痛い敗戦を喫している。同点のまま終えられれば勝ち点1を上積みできただけに、もったいない結果でもあった。

 不在により、その存在感がむしろクローズアップされる。大井の、選手としての価値の大きさを示している。

 リーグ戦30試合に出場。ピンチの場面で体を張り、味方を鼓舞し、最終ラインで戦い続けた。しかし、8月20日に行われた2ndステージ第9節・サガン鳥栖戦、後半途中のことだった。自陣右サイドのスペースに出たボールへ猛然と駆けると、相手選手が追いつく直前にスライディングでカットした。すぐに立ち上がり自身のポジションに戻ったが、左足を押さえる様子が気になった。

 試合は終盤に追いつきドローに持ち込んだ。ミックスゾーンに現れた大井に声をかける。しかし、普段はどんな結果でも足を止めて取材に応じる彼が、「今日はすいません」とだけ言い残して去っていった。左足にはテーピングが巻かれていた。

 左太腿二頭筋肉離れと診断された。中心選手の離脱は大きな痛手だが、名波監督は症状が重くないことを強調した。大事をとって翌節のアビスパ福岡とのアウェイゲームには帯同しなかったが、9月10日の2ndステージ第11節・ヴィッセル神戸戦にはスタメン復帰を果たした。

 この試合が前述の名波監督のコメントにある神戸戦ということになるが、背番号3は前半途中に再び左足を痛めてしまう。ハーフタイムが終わり、ロッカールームから戻ってくるサックスブルーの中に、大黒柱の姿はなかった。

 そして、大井はここから1ヶ月以上に渡る離脱を余儀なくされるのだった。

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