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ドルト、難敵相手に10人でドロー。ロイス退場でより明確になった強み

text by 本田千尋 photo by Getty Images

きっかけはアクシデント

ウスマンヌ・デンベレ
抜群の存在感を放ったウスマンヌ・デンベレ【写真:Getty Images】

 1人少なくなったドルトムントは、布陣を[5-2-3]から[4-2-1-2]に変更。4バックにバイグルとゲッツェの2ボランチ、トップ下にデンベレ、そしてオーバメヤンとプリシッチの2トップだ。10人になったことで、特にデンベレは、より広くスペースの恩恵を受けることになった。

 ホッフェンハイムの3ボランチの前方のスペースで、自由を与えられたデンベレ。49分、CBの間にスルーパスを通して、オーバメヤンの同点ゴールをアシストする。後半開始直後の布陣変更に、ホッフェンハイムは対処しきれなかったようだ。トップ下のポジションでデンベレは、鋭いドリブラーとして敵の守備陣を切り裂き、優れたパサーとして攻撃を組み立てた。10人となったことで、ドルトムントはデンベレを中心に効率的なサッカーを行えることになった。

 余談になるが、もし“後半から1人減らして10人で戦ってもいい”というルールがあったら、サッカーはよりエキサイティングになるのかもしれない。現在クラブW杯で試験的に導入されている“4人交代制”とは方向性が異なるが、仮にそういったルールが導入されたら、利用する監督は意外に多いのではないか。

 好転した流れは、69分に途絶えてしまう。デンベレが負傷退場したことで、ドルトムントはホッフェンハイム戦で唯一の創造性を失った。デンベレが退いてからは受け身に回って攻め手を欠き、ようやく2-2のドローに持ち込んだ。

 しかし再び怪我人が続出し、野戦病院化したチーム事情を考えれば、アウェイでドローの結果は悪くはない。トゥヘル監督も3人目の交代はメリーノと、守備的な交代を選択する。長引く右足首の負傷の影響で出番はなかったが、ベンチ入りした香川真司も「10人になって、相手もいいチームの中で、引き分けに持ち込んだことはやっぱり、逆に良かったんじゃないかなあ」と胸を撫で下ろした。何より相手は“未来の名将”の呼び声高いナーゲルスマン監督率いる、難敵ホッフェンハイムだったのだ。

 ロイスの退場という不測の事態に救われた、ホッフェンハイム戦だった。

(取材・文:本田千尋【ホッフェンハイム】)

【了】

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