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鹿島を勢いづけたレアルの怠惰。最も優れていたのは疑いなくベンゼマ【スペイン人記者の目】

12月19日、クラブワールドカップ2016決勝、レアル・マドリー-鹿島アントラーズの1戦がおこなわれ、延長戦の末、4-2で欧州王者がJリーグ王者を破った。開催国王者の健闘により試合は均衡した熱戦となったが、紙・ウェブ媒体だけでなく、テレビ・ラジオでも活躍するスペイン・マルカ紙記者は、先制後の“エル・ブランコ”は「眠りこけたようだった」と断じている。(文:エンリケ・オルテゴ【マルカ】/翻訳・構成:江間慎一郎)

シリーズ:E・オルテゴの戦術眼 text by エンリケ・オルテゴ photo by Getty Images

全員のためにプレーするベンゼマ

レアル・マドリーの攻撃を下支えしたカリム・ベンゼマ
レアル・マドリーの攻撃を下支えしたカリム・ベンゼマ【写真:Getty Images】

 UEFAチャンピオンズリーグ、UEFAスーパーカップ、そしてFIFAクラブ・ワールドカップ……。2016年に三つの国際タイトルを獲得したレアル・マドリーだが、トロフィーを掲げるためにはもちろん美点と価値を備えていなくてはならない。

 今回のクラブワールドカップで発見できたものは、最高の状態か、ほぼそれにかすっていたカリム・ベンゼマだろう。そう、フランス代表FWは再起を果たしたのだ。準決勝クラブ・アメリカでも、チームの攻撃面への影響やゴールによって最高のカリムなる顔をちらりとのぞかせていたが、決勝の鹿島戦では疑いの余地なく最も優れた選手だった。たとえクリスティアーノ・ロナウドが、得点数の重みによってアディダスプレゼンツのMVPを奪い去ったとしても、である。

 カリムが参加するマドリーの攻撃は、ずっとずっと素晴らしい。鹿島戦では実際に、最高の状態に近づくベンゼマを目にできた。フィジカル面が相当に良くなっているため、ジネディーヌ・ジダンは120分間にわたってピッチに立たせ続けたが、延長戦に入っても中盤の選手からボールを受けようと下降を繰り返していた。

 この一戦のカリムこそ完全無比と称せるストライカーだ。自身が決めた先制点では、こぼれ球を押し込もうとペナルティーエリアで備えていた。追加点のきっかけとなるPK判定の直前には、ルーカス・バスケスをスペースに走らせる巧みさを見せた。3点目の場面では、クリスティアーノを曽ヶ端準と1対1とする深度の深いスルーパスを通して輝いた。そして4点目は、一息入れていた。

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