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Jリーグ 7年前

湘南の新主将、菊地俊介。高山の長期離脱で引き継いだ大役。2ゴールで消し去った“トラウマ”

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「自分から『やります』と言ったことがすごく大事なんです」(曹貴裁監督)

菊地俊介
菊地俊介の一撃で硬さが取り除かれた湘南は攻守両面でヴェルディを圧倒していく。【写真:Getty Images】

 昨シーズンはキャプテンの高山を、菊地、菊池、そして三竿の3人が副キャプテンとして支えた。そのなかで開幕直後に離脱したことに対する忸怩たる思い、今シーズンも指揮を執る曹監督へ注ぐ畏敬の念、何よりも湘南というチームに抱く深い愛が、代行ではなく正式にキャプテンを務める決意を導く。

「あの日(5日)は午前、午後の2部練習で、午後が始まる前にも陽太君と近くのカフェに行って話をしました。最終的には僕の意見を尊重すると陽太君は言ってくれたので、そこで『やります』と。2年目までは自分のことで精いっぱいだったけど、いまは自分が若手を引っ張っていかなきゃ、という気持ちが強い。

 年齢的にもそう思っていますし、亮太君や航、三竿、大介たちもいまは違うチームで頑張っている。今シーズンの僕たちはJ2で戦っていますけど、前日などにJ1の試合があるときはもちろん映像を見ているし、すごく刺激にもなっています」

 秋元から報告を受けた曹監督は、前日に手術を受けていた高山へ連絡を入れた。菊地にキャプテンを任せる経緯を説明したうえで、「いまはけがを治すことに集中しろ」と檄を飛ばしている。

「何も言わないのは薫に対して失礼だからね。シュンに関しては、自分から『やります』と言ったことがすごく大事なんです。そういう気持ちが、ヴェルディ戦のプレーにも反映されていたと思うので」

 果たして、間断なく雨が降る敵地・駒沢陸上競技場で行われたヴェルディ戦は、前半16分に先制を許す。カマタマーレ戦から引きずる悪い流れ。5連勝を達成している間、すべて無失点という堅守を誇るヴェルディ。ベルマーレを覆いかけた嫌なムードを、言葉とプレーで振り払ったのが菊地だった。

「ボールを前へ運ぶところで慎重になりすぎているので、ミスを恐れることなくプレーしよう。相手にボールをもたれたときには、もう少しコンパクトにしてプレッシャーをかけよう」

 失点後に全選手を集めて組んだ円陣で、雨の影響でスリッピーになっているピッチに対してナーバスになるなと檄を飛ばした。そして、わずか5分後には今シーズン初先発した19歳、MF神谷優太の縦パスを受けて切り返し、ペナルティーエリアの外側から鮮やかなミドルシュートを決めて同点とする。

「コースが空いていたし、芝生も濡れていたので、速いボールを狙った場所へ蹴ることができました」

 計算通りに相手GKの手前でワンバウンドさせて、球足をさらに鋭くさせた。神谷に加えて18歳のルーキーコンビ、DF杉岡大暉(市立船橋高校)とMF石原広教(湘南ベルマーレユース)と、若さを勢いに変えるために3人もの十代選手を先発させていたベルマーレはこの一撃で硬さが取り除かれ、攻守両面でヴェルディを圧倒していく。

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