非凡な“普通さ”が最大の武器。準決勝で真の姿を見られるか
そんなに強そうに見えないが実は強い。この見た目とのギャップがある意味最大の特徴かもしれない。
19日のドルトムント戦、3分に生まれたモナコの先制点。メンディの力強いドリブルからのミドルシュートをGKが弾き、ムバッペが押し込んでいる。
メンディが中盤でドリブルを開始した時点で、ドルトムント守備陣にはまだ余裕がありそうだった。しかし、一気にペナルティエリアの手前まで持ち込まれている。予想外に速かったのだろう。メンディはそのままシュートしているが、その瞬間にはムバッペが2人のDFの間でフリーになっていた。そこへパスが入っていても1点になっていただろう。ムバッペのマークの外し方も巧みで速かった。
2点目はルマルのクロスからファルカオのヘディング。何でもないクロスに見えるが、ファルカオは絶妙のタイミングでマークを外していて、ルマルはその瞬間にピンポイントのクロスを合わせている。モナコのフィニッシュへのアプローチはカウンターを除くと、教科書どおりのサイドからのクロスが多い。ただこれも、クロスに合わせるスペシャリストであるファルカオと、スピード抜群のムバッペがいて、ルマルやB・シウバのクロスの質が高いのでゴールになる。普通さが非凡だ。
ダメ押しの3点目をとったヴァレール・ジェルマンは、ムバッペが台頭してくるまでは不可欠なFWだった。もともとはMFだが、レスターにおける岡崎慎司に似ていて、エースのファルカオを立てながら地味な仕事を精力的にこなすキーマンだったのだ。
CLを戦い抜くには層が厚いとはいえなかったが、それもここにきて充実してきている。そもそも絶対的なレギュラーだったジョアン・モウチーニョもバカヨコ、ファビーニョの台頭で交代要員になっていたが、彼らを出場停止で欠いたドルトムント戦ではそのモウチーニョが穴を埋めている。
このチームの隠れた最大兵器であるボランチコンビを欠いた準々決勝を乗り越えた。準決勝で最強の陣容が揃うモナコは、どのチームにとっても油断のならない相手だろう。
(文:西部謙司)
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