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アトレティコが信じ続けた奇跡の逆転。レアルを襲う獣に喪失感もたらした「あの1点」

text by 舩木渉 photo by Getty Images

アトレティコ2点先行も…絶対に許してはいけないゴールが

 ビセンテ・カルデロンがゴールの余韻から冷めないうちに、次の1点が決まる。15分、相手最終ラインの裏に抜け出そうとしたフェルナンド・トーレスがペナルティエリア内でラファエル・ヴァランに倒され、アトレティコにPKが与えられる。

 それをアントワン・グリーズマンが蹴り、GKケイラー・ナバスに触られながら何とかゴールにねじ込んだ。これで2戦合計スコアは2-3となり、一気に試合の行方はわからなくなる。

 CL決勝進出を信じて疑わないスタジアム全体に、「いける」というムードが漂い始めた。キックオフ直後は獣のような眼をしていた選手たちも、落ち着きを取り戻し始め、試合のペースが徐々に落ちていく。

 すると前半終了間際の42分、アトレティコの一瞬の気の緩みを見逃さなかったマドリーが牙をむいた。クリスティアーノ・ロナウドが投げたスローインに、カリム・ベンゼマが反応して抜け出す。

 左サイドの深い位置でボールを持ったベンゼマは遅れて対応に入った3人のディフェンスを、巧みなドリブルでいとも簡単に振り切りゴール前へ。そして走り込んできたトニ・クロースへ丁寧なパスを送る。

 マイナス方向のラストパスを受けたクロースが右足を振り抜いて低い弾道のシュートを放つと、一度はGKヤン・オブラクが弾いた。しかし、ボールがこぼれた先にはマドリーの選手がいた。イスコが冷静に詰めてゴールネットを揺らした。

 1stレグで3失点していたアトレティコは、ホームで最低でも4ゴール奪わなければ勝利できない計算だった。そのうえマドリーにアウェイゴールを1つでも許すと、勝利には5ゴールが必要になる。まさに悪夢だ。

 サンティアゴ・ベルナベウでの1stレグに続いて4-3-1-2フォーメーションのトップ下(1)に入っていたイスコは、序盤からピッチを広く動き回ってボールに積極的に絡み、何度も決定的な場面を作り出していた。そしてついにアトレティコの希望を打ち砕いた。

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