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アトレティコが信じ続けた奇跡の逆転。レアルを襲う獣に喪失感もたらした「あの1点」

たとえ絶望的な状況でも最後の一瞬まで勝利を信じて疑わない。アトレティコ・マドリーはディエゴ・シメオネ監督の下、一致団結してレアル・マドリーを迎え撃った。現地時間10日のチャンピオンズリーグ準決勝2ndレグは観る者の胸を熱くする激闘だった。(文:舩木渉)

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「信じて立ち止まるな!」

シメオネ
アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督【写真:Getty Images】

 まるで獲物に襲いかかる獣のようだった。

 現地時間10日に行われたチャンピオンズリーグ(CL)準決勝2ndレグ、アトレティコ・マドリーの選手たちは試合開始とともにピッチに放たれ、レアル・マドリーのゴールに突進していった。

 アウェイでの1stレグを0-3で終え、決勝進出は絶望的な状況。それでも諦めないのがアトレティコだった。ディエゴ・シメオネ監督は試合前日の記者会見で「この試合のため選手たちにモチベーションを与えなければならないのなら、私はここを去るべきだ」と語っていた。

 つまり監督が何も指示しなくとも、選手たち自身が自然と高い士気でマドリーとの2ndレグに臨まなければならないということだ。選手たちもその思いに答えた。

 アトレティコの選手たちの諦めない姿勢は、試合前のSNS上の投稿からもうかがえた。

「信じて立ち止まるな!」(サウール・ニゲス)

「チームとファンへ、夢のために全員が一緒になって戦おう。さあ、信じよう」(フェルナンド・トーレス)

 彼らはシメオネ監督の自伝のタイトルにもなった象徴的な単語“creer“を投稿の中に含めていた。意味は「信じる」。2年連続での決勝進出を誰1人信じて疑わないのは、試合が始まってすぐにわかった。

 序盤、アトレティコはある程度自陣で構えつつ、前線からマドリーの選手たちに猛然とプレッシャーをかけてカウンターを狙う。そのカウンターの切れ味も普段以上で、手数をかけずに猛スピードでゴールに迫る様は圧巻だった。

 そして12分、待望の瞬間が訪れる。コケのコーナーキックにサウールが頭で合わせてアトレティコが先制する。下部組織出身の2人による気持ちのこもった一撃だった。得点後の彼らの眼からは異常なまでにこの試合に集中している様子が伝わってくる。

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