フットボールチャンネル

Jリーグ 7年前

「FW闘莉王」の心意気。時限的ではないコンバート。大混戦J2、京都が放つ不気味な存在感

約3分の1を消化したJ2戦線で、京都サンガが右肩上がりの曲線を描き出した。一時は21位とJ3への降格圏に沈んでいたが、故障から復帰した田中マルクス闘莉王をフォワードで起用した愛媛FCとの第8節から一変。4勝4分けと無敗を続け、順位を12位まで上げてきた。上位をうかがう東京ヴェルディに敵地で逆転勝ちを収めた21日の第15節後に、今シーズンから加入した36歳の大ベテランは、胸中に抱く「フォワード・闘莉王」としての心意気を熱く語った。(取材・文・藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

先発メンバー表に、ちょっとした“異変”が

京都サンガの田中マルクス闘莉王。現在はFWの位置でプレーしている
京都サンガの田中マルクス闘莉王。現在はFWの位置でプレーしている【写真:Getty Images】

 勝利のために、チームから求められる役割を完遂したい。一方で日本に帰化するはるか前、ブラジル人のトゥーリオとして来日した千葉・渋谷幕張高校時代から積み重ねてきたスタイルに矜持も抱いている。

 二律背反する思いが、田中マルクス闘莉王の胸中で幾度となくぶつかり合っていたのだろう。敵地・味の素スタジアムに乗り込んだ、21日の東京ヴェルディとのJ2第15節。京都サンガの先発メンバー表に、ちょっとした“異変”が発生していた。

 右太ももの肉離れから復帰し、本来のセンターバックではなく最前線で起用された4月15日の愛媛FC戦。いきなりハットトリックを達成し、サンガを勝利に導いた闘莉王のポジションは、続く松本山雅FC戦から「DF」ではなく「FW」と記されてきた。

 その間に3つのゴールを上積みして、チームも愛媛戦を境に3勝4分けと確実に勝ち点を獲得しながら迎えたヴェルディ戦。闘莉王のポジションは再び「DF」と表記されていた。

「登録のままでいこうと。いろいろと事情がありまして」

 表記上ではディフェンダーが5人。実際にキックオフの笛が鳴り響くと、背番号4は前節までと同じく最前線に位置して、2試合の出場停止処分が明けたケヴィン・オリスとツートップを形成した。

 布部陽功監督が苦笑いしながら「いろいろと事情が」と言及したのは、闘莉王のたっての希望があったからだ。試合後の取材エリアで、闘莉王もまた苦笑いしながら登録を再変更した理由に触れている。

「僕自身はフォワードだと思っていない。いまは前で使われているかもしれないけど、ずっとディフェンダーとしてプレーしてきたし、いまだに攻撃的なディフェンダーだと思っているので」

 起用法に不満を抱いているわけではない。要はちょっとした心意気の問題。ピッチでは誰よりも熱く、激しく、そして劣勢を強いられたサンガを鼓舞する、頼れる背中を見せ続けた。

「本職のフォワードじゃない、というのは見ている誰もがわかると思うんですけど、それでもチームのために必死です。右足の状態がまだ100パーセントではない状態で連戦が続きましたけど、やらなければいけないことを、チームの一員としてこなしている。それだけです」

1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top