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磐田・カミンスキーのファインプレー、なぜ一度PK判定に? 審判委員会がブリーフィングを開催

text by 中山佑輔 photo by Getty Images

柏レイソル戦で素晴らしいセーブを見せたジュビロ磐田のカミンスキー
柏レイソル戦で素晴らしいセーブを見せたジュビロ磐田のカミンスキー【写真:Getty Images】

 1日、日本サッカー協会審判委員会は、都内で「2017第3回JFAレフェリーブリーフィング」を開催。上川徹JFA審判委員会副委員長が出席し、レフェリングや判定についての理解を深めることを目的に、Jリーグやルヴァン杯の試合であった事象についての説明がなされた。

 説明は実際の試合映像を使ったテスト形式で行われ、扱われたシーンはコンタクトプレー、ペナルティエリア内の事象、オフサイドの有無などに及んだ。実際の判定が正しい判定とは異なるシーンもあったが、オフサイドの見極めなど映像で繰り返し見てもわかりづらい判定を審判団が正しくジャッジしたケースもあった。

 今回のブリーフィングでは珍しいシーンが取り上げられている。5月20日(土)のJ1第12節、ジュビロ磐田-柏レイソルの一戦で磐田のカミンスキーが見せたファインセーブのシーンだ。

 柏レイソルMF武富孝介がDFラインの裏に抜け出したところで、飛び出した磐田GKのカミンスキー。クリーンにボールをかき出したように見えたが、レフェリーはPKを宣告した。頭を抱えるカミンスキーだったが、主審と副審の協議によって、PK判定は正しくないことが確認され、ドロップボールで試合はリスタートされた。

 このシーンはなぜ一度PKのジャッジが下されてしまったのだろうか。上川副委員長は次のように説明している。

「レフェリーは最初、GKがチャレンジしてボールにも触っていないという判断をしました。ただ、レフェリー自身が笛を吹いた瞬間にはそう思ったんですけど、それと同時にボールのコースが大きく副審のほうに変わったと。それで笛を吹いた後に、自分が下した判断に疑問を持って、副審がどういう情報を持っているか確認しにいった。

 副審としては、GKはボールにしっかり先に触ったと。だからノーファウルだという意見を伝えました。副審が持っている情報を主審が聞いて、判断が間違っていたということでPKを取り消してドロップボールで再開となったと」

 上川副委員長は「自分のミスを認めて、もちろん副審の情報をもとにですけれども、ドロップボールで再開した対応は非常に勇気のいるものだったと思う」と、正しい判定に改めた主審のパーソナリティーを評価する一方で、判定が覆ったプロセスについては反省が必要だとしている。

「本当であればもっとすぐに副審のところにいくべきだったと思います。でないと磐田の選手の異議といいますかアピールを受けて対応しているように見えてしまう。副審は主審がPK判定をしたときに一緒に旗をあげて、『僕はこう思うんだけど』と伝えるべきだった。あとで副審に聞いたら、『もしかしたら、その前に何か別のファウルが起きたんじゃないのかなという疑問をもって、なかなか伝えられなかった』と(言っていた)」

 カミンスキーは昨年9月17日に開催された鹿島アントラーズ戦でも、本来ならファインセーブとなるはずのプレーでPK判定を取られている。そこには何か共通する問題があるのだろうか。審判目線で見ると、日本人GKにはないポーランド人守護神の特徴が浮かび上がってくるようだ。上川氏は次のように語っている。

「彼(カミンスキー)は去年もファインプレーをPKにとられているのがあるんです。そのときのレフェリーもそうですし、今回のレフェリーにも話を聞きました。映像で見たら、すごくクリアーに、フェアにプレーしているんです。

 いろいろと聞くと、若干このGKは『ためる動き』があるみたいなんです。レフェリーからすれば『このタイミングでいったらボールに間に合わないだろう』っていう感覚があるんです。

 でも(カミンスキーは)若干そこでスピードを緩めるのか、確実なプレーをするために待っていこうとしているのか、そういう特徴がこのGKにはある。日本のGKがこういうプレーするときにはなかなかこういう判断は起きないんですが。

 聞いてみたら若干そういう風に見えるというのは言っていました。そのあたりは(選手についての)情報を変えていかないといけないなと思います」

 またこのシーンでは、PK判定が覆ったあとにレイソルの選手たちが主審に詰め寄ったが、柏キャプテンの大谷秀和は味方選手たちに対して次のプレーに移るよう促していた。上川副委員長は、柏の主将がとった振る舞いに感謝している。

「この(判定が覆った)状況で、大谷選手のキャプテンシーあふれる対応といいますか、(主審につめよる)味方選手に『いいから下がれ』と対応してくれたことは、非常にありがたいですし、レフェリーが大きなミスを犯しているんですけど、とてもリスペクトある対応をとってくれたことに感謝をしたいと思います」

 物議をかもしたこの場面。判定はもちろん、カミンスキーが見せるプレーの質、大谷のプロフェッショナルな振る舞いなど、さまざまなものが見えたシーンであった。

(取材・文:中山佑輔)

【了】

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