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アジア 7年前

波乱万丈のサッカー人生。元日本代表DF青山直晃がタイで挑む「弱肉強食」の戦い

text by 藤江直人 photo by Getty Images

武闘派センターバックの飽くなきチャレンジは続く

 貫いてきた不器用さが、タイでは最大のストロングポイントとなった。2年目の2016シーズンはリーグ優勝を果たし、今シーズンのACL出場権も手にした。時間の経過とともに鮮明になってきたもうひとつの夢が、はっきりとした輪郭を帯びた。

「このチームで、日本のチームにACLの舞台で勝ちたいと。グループリーグではホームで鹿島アントラーズに勝ちましたし、それはすごく嬉しかったけど、最後はフル出場してそれでもかなわないとなれば、それでいい。こういう形で終わったことで、何だかやり切れない感じはありますね」

 いま現在のチームでは、最も長くプレーする外国人選手となった。決して低くない金額と引き替えに加入した以上は、目に見える結果をすぐに求められる。在籍わずかで去っていった外国人選手を、何人も見てきた。弱肉強食の世界の宿命にいま、自分自身もさらされつつあると感じているのか。

「新しい外国人選手がまた来るかもしれないし、そこで自分もどうなるかわからない。それだけ外国人選手に求められるものはすごく大きい。ボス(オーナー)の声なのか、監督の判断なのかはわからないけど、こういうふうにパッと出られなくなるので本当に危ないですよ。

 ただ、日本にいたときはもらった年俸のなかから税金を半分くらい払うんですけど、こっちは税金をチームが払ってくれて、僕は(年俸を)そのまま手取りでもらっているので。家も自動車も用意してくれているし、食事も美味しい。道路の渋滞は大変だけど、あとは本当にいいんですけどね」

 休む間もなく、連覇を目指すリーグ戦が再開される。ブルガリアでプレーしていた、これまでは無名だったMF加藤恒平がハリルジャパンに大抜擢されて注目を集めた。タイで戦い続ける青山は「年齢的にも、僕はないですよ」と苦笑いしながら、必死に気持ちを切り替える。

「頑張っていれば、何かあるかもしれないとは思いますけどね。だからこそ、また新しく何か目標を見つけなきゃ、という感じです」

 タイの国内リーグは、青山によれば年を追うごとに活況を呈しているという。夏場になればヨーロッパの移籍市場が開き、チャンスとビッグマネーを求めて大勢の外国人選手も新たにやってくる。7月には31歳を迎える、武闘派センターバックの飽くなきチャレンジは続く。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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