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Jリーグ 7年前

柏を変えた育成哲学。アカデミー育ちが台頭…ようやく見出した「8+3」の最適なバランス

text by 藤江直人 photo by Getty Images

中川と中谷、好調を支えるアカデミー育ちの若武者たち

中川
中川寛斗(左)と中谷進之介(右)が柏レイソルの好調を支えている【写真:Getty Images】

 レイソルを首位へ押し上げた8連勝は4月16日、ネルシーニョ監督率いるヴィッセルを敵地で撃破した一戦から幕を開けた。先発陣の顔ぶれを見ると、開幕時から徐々に戦い方が変わっていることがわかる。

 外国人選手はクリスティアーノだけとなり、中川と身長差27cmの2トップを結成。故障で離脱した大津に代わって先発に復帰した武富、ヴァンフォーレ甲府から加入して2年目の伊東純也が2列目のサイドに入る。

 この4人が怒涛のハイプレスを継続して主導権を握る。特に小さな体に無尽蔵のスタミナを搭載する中川は、連勝中の1試合の総走行距離がすべて11kmを超えるなど、ハイプレスの一の矢を担ってきた。

 中川は「前からどんどんプレッシャーにいって、できるだけ早くボールを回収して、いい攻撃につなげる。そういうサイクルができている試合で、僕たちが勝利する確率はあがっているので」と、積極的な守備が攻撃にためにあることを説明してくれたことがある。

 もちろん中川を含めた数人でプレッシャーをかけたからといって、直接ボールを奪える可能性はそれほど高くはない。それでも誰もが労を惜しまずに走り回る理由には最終ライン、特に21歳の中谷と20歳の中山とで形成される、J1でも屈指の若さのセンターバックコンビへ寄せられる絶大なる信頼感がある。

 執拗にプレッシャーをかけ続ければ、相手の最終ラインやボランチはロングボールを蹴らざるを得なくなる。体勢が十分ではない場面が多いので、必然的に雑なパスとなる。

 そこで空中戦に強く、セカンドボールの回収率も高い中谷と中山の出番がやってくる。足元の技術にも長けた彼らがビルドアップの起点となることで、クラブが掲げてきた「ボールを保持する攻撃的なサッカー」が始まる。

 最終ラインのけん引役となる中谷は、2014シーズンにU-18からトップチームへ昇格したものの、最初の2年間はJ1でわずか8試合に出場しただけ。大半の試合をピッチの外から見つめていた。

 2015シーズンのオフにはネルシーニョ監督率いるヴィッセル神戸、ネルシーニョ体制下でヘッドコーチを6年間務めた井原正巳監督率いるアビスパ福岡から期限付き移籍のオファーも届いた。

 身長184cm体重79キロのボディに秘められていた才能は、背番号が「20」から「4」に変わり、下平監督が就任した昨季、ついに開花のときを迎える。センターバックの中心として31試合に出場した。

「若手の中でやっている感覚? ないですね。正直、チーム全体が若いので、みんなも若いとは思っていないし、その中で競争を勝ち抜いて試合に出ているので。ただ、U-18までやってきたことは自分たちの財産になっているし、いまはトップチームの選手たちの融合がすごく上手くいっている」

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