フットボールチャンネル

柴崎岳、現実味帯びてきた1部昇格。大一番で決定的な活躍、もはや完全なキープレーヤーに

text by 舩木渉 photo by Getty Images

サイド起用で引き出された柴崎の長所

 この日のテネリフェは序盤からボールを支配し、主導権を握ってヘタフェを抑え込んだ。もちろんピンチがなかったわけではないが、カディス戦のように猛攻を食らうことなく、90分間を通して相手の時間を作らせなかった。

 ピッチ中央に構えるアイトール・サンスとビトーロのコンビが安定し、中盤でしっかりと攻撃を組み立てられたこと、そして守りでも中盤が機能したことは2ndレグに向けてポジティブなポイントだろう。

 アウェイで戦ったカディス戦の1stレグは柴崎をボランチで起用し、チーム全体のバランスが崩れてしまったが、それ以降は安定感を取り戻した。むしろ柴崎が完全なるキープレーヤーとして機能するようになっている。

 ブロックを作る“耐える守備”を実践したカディス戦の1stレグでは、両サイドに縦への推進力を武器とするアタッカーを置いてカウンターに望みを託した。結果的にその狙いはハマらず、カディスの猛ラッシュに屈した。

 ホームに戻ったテネリフェは柴崎を左に、キャプテンのスソを右に配置する形に切り替える。すると左でボールを動かし、巧みにキープしながら時間を作って右あるいは中央にラストパスを通す柴崎の得意なプレーが出やすくなった。

 右のスソから崩す場合、柴崎はしっかりとゴール前に詰めている。チームとして徹底された形をより表現しやすくなったと言えるだろう。カディス戦2ndレグの柴崎のゴールも、サボらずゴール前に走り込み、フリーになるポジションをとっていたことから生まれた。

 21日のヘタフェ戦でもゴールにはならなかったが、59分に右サイドの崩しから柴崎がシュートを放つ場面があった。特にここ最近はレギュラーシーズン終盤にコンディションを落とし気味だったスソの調子が戻り、仕掛けのキレが増しており、両サイドからの攻撃にアクセントを加えている。

 テネリフェのホセ・ルイス・マルティ監督は、試合後に「柴崎岳とスソをサイドで起用した。ビトーロも良い出来だったし、彼らは素晴らしいパフォーマンスを発揮していた」と、中盤の3人を絶賛した。

 レギュラーシーズン中は左サイドに欠かせない存在で、プレースキッカーも担っていたアーロン・ニゲスを外してまで柴崎を起用するのには、それなりの理由があるということ。最近の活躍で地元ファンの心をがっちりと掴み、指揮官からの信頼も確固たるものにした。

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top