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ドルトムント、新たな“ボス”の肖像。息づくトータルフットボールの哲学と高度な守備戦術

text by 中田徹 photo by Getty Images

ボスの攻撃サッカー哲学とは。「5秒ルール」のルーツ

 現役時代の印象から『フェイエノールダー』とみなされているペーター・ボスだが、1970年代と90年代のアヤックスのサッカーに深く影響を受けている。RKCワールワイク時代のボスは、すでに24歳だったにも関わらず自室にアイドルのヨハン・クライフのポスターを貼っていたという。

 また、フェイエノールトで活躍した頃、ボスは練習を終えると車に乗って、かつてのアヤックスのホームグラウンドのあったデ・メールまで行ってルイ・ファン・ハール監督の練習を見学していた。さらに、指導者になってからはペップ・グアルディオラの影響も受けて、第2期ヘラクレス時代(2010−13年)から攻撃サッカーのフィロソフィーを実践するようになった。

 当時のヘラクレスはオランダリーグ内でも17から18番目の予算しかないチームだったが、それでも時には3-4-3というフォーメーションを採用し、ポゼッションサッカーで相手を圧倒しようと試みて2010/11シーズンには8位という好成績を残した。「ヘラクレスのサッカーは見ていて面白い」という高評価を得た一方、サポーターの一部からは「あまりに無茶だ」という非難もあった。

 2013年には観客動員の低迷に悩まされていたフィテッセから「攻撃的なサッカーでファンを増やして欲しい」というリクエストを受けて監督に就任。ボス監督はそのスペクタクルなサッカーから「将来はオランダ代表の監督に」という新聞辞令も受けた。

 この時期にボス監督は、かつてバルセロナのカンテラで指導者をしていたカペジャスと知り合い、より攻撃サッカーへのメソッドを高めている。グアルディオラの「3秒ルール」に2秒足し、失ったボールを5秒以内に回収する「5秒ルール」はフィテッセ時代から始めている。

 2016年1月からはジョルディ・クライフがテクニカルディレクター(強化部門の責任者)を務めるマカビ・テルアビブ監督に就任し、半年でチーム力を引き上げた。その年の夏から、ボスはアヤックスの監督を務めた。

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