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ドルトムント、新たな“ボス”の肖像。息づくトータルフットボールの哲学と高度な守備戦術

text by 中田徹 photo by Getty Images

ボス戦術とドルトムントの親和性。香川の復帰にも期待が

香川真司
左肩の脱臼からの復帰を目指す香川真司にも、ボス監督なりのプランが用意されているはず。まもなく契約延長発表とも【写真:Getty Images】

 5年に及ぶフランク・デ・ブール政権のサイクルが終わり、これまでのサッカーより縦に早く、一気にシュートまで持ち込むボス監督のサッカーは、選手たちに大きな戸惑いを生んでしまい、前半戦はリーグ戦でもたついてしまった。その結果、後半戦の追い上げも虚しくフェイエノールトに優勝を譲ってしまったわけだが、最終的にチームを完成品に仕上げたという意味において、ボスのチームビルディングの手腕は確かに高いと言えよう。

「攻撃的で魅力的なサッカー」という点で、ボスが目指すサッカーは、ボルシア・ドルトムントのサッカーと親和性が高い。「5秒ルール」に関しても、ゲーゲンプレスにつながる点がある。アヤックスでは失った瞬間、ボールに近くにいる選手3人から4人が相手に襲いかかり、残りの選手たちはボールの次の行き先を予測するポジショニングを取っていた。この守備戦術は、味方との共通理解とコンディションの維持が高いレベルで要求される。

 実はアヤックスはボス監督が就任したばかりのプレシーズンで、アマチュアのAFCと2-2で引き分けるなど、新戦術の実践に不安を抱えていた。CLプレーオフでは選手との話し合いの末、ボス監督が妥協してややラインを下げてオーソドックスに戦ったものの、ロストフとのアウェーゲームに1-4と大敗する失態を演じている。その後、ボス監督は選手たちのシャッフルを重ねて後半戦にピークを持ってきた。

 今季のプレシーズンで、ボス率いるボルシア・ドルトムントは4部リーグのロート・バイス・エッセンに2-3で敗れている。ボス監督のプレシーズンのコンディションメソッドは2部練習をすることなく、徐々に上げていく方法をとっている。左肩の脱臼から復帰を目指す香川真司に関しても、しっかりプログラミングされているのは間違いない。

 フランク・デ・ブールからボスに監督が代わってから、アヤックスの負傷者は一気に減った。香川もボス監督のメソッドを信用し、まずは焦ることなく100%の状態に戻してから実戦に加わって欲しい。

(取材・文:中田徹)

【了】

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