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【倉敷&玉乃の眼】アトレティコ、未来につながる1年。苦難を乗り越えたシメオネの魔力【16/17シーズン総括】

シリーズ:16/17欧州主要クラブシーズン査定 text by 編集部 photo by Getty Images

少年時代から別格だったF・トーレス。“親友”玉乃が明かす秘話

ーー玉乃さんはアトレティコのユース時代にトーレスが何かをもらっているのを目撃したことありますか?

玉乃 物はわからないですけど、トーレスにひたすら愛情をあげていましたね。今、ここぞとばかりにその人たちが出てきている。「俺がトーレスを育てた」と言っている人がたくさんいますよ。ここにもいるし。極東で親友だと言って(笑)

 12、3歳からそれくらい愛されていましたから。僕はトーレスと同じ高校に通っていたんですけど、校長先生だって鼻が高いと思いますよ。校長室はトーレスのサイン一色ですからね。アントニオ・ロペスとか、バスケの選手とか、歴代のOBに他にも有名な選手がいるはずなんですけど、トーレスは別格です。自慢の値段としてはレベルが違う。

倉敷 最終節で2点取るところがまた憎いよね。ビセンテ・カルデロンでの最後のホームゲーム(編注:リーガ第38節 アスレティック・ビルバオ戦。3-1で勝利)で、先に2点を取ったのがトーレス。普通はあんなことできないですよ。持ってますよ、本当に。しかも、いつもなら外すだろうシュートをちゃんと決めている。「エル・ニーニョ(神の子)」という特別なあだ名にふさわしいものを持っていますよね。

玉乃 ただ、シメオネだけはトーレスに対して懐疑的な目を向けていて、うまくいっていないような雰囲気を僕は感じてましたね。

倉敷 シメオネって2トップにすごく厳しいんですよ。4-4-2がすごく好きなんだけど、その「2」の守備に関してはすごくうるさく言うけど、トーレスは守備をしないじゃないですか。シメオネにはそういう選手と別れてきたっていう歴史があって、守備に対するリクエストは相当厳しいと思いますよ。

玉乃 クラブとは相当もめたんじゃないんか、ということは想像できますよね。

ーーだからこそ(アントワーヌ・)グリーズマンと(ケビン・)ガメイロの2トップがファーストチョイスだったのでしょうか。

倉敷 そういうことだと思います。アトレティコはポゼッションを捨てたサッカーで、ボール支配率40数%で強敵に勝てると面白いというか、他にはなかなかない。それでガチガチに守るのかというと、そうではないけど上手に守って点を取ってしまう。そういうサッカーだとサボる選手が1人でもいたり、退場者を出したらうまくいかないんですよね。

 そういう意味では全員が働ける。だからこんなに負傷者が多かったシーズンでよくやった気はします。新シーズンも負傷者が出ない保証はないですよ。あれだけ負傷者が続出したのには、シメオネが実践するサッカーに原因があるのかもしれないですから。そこは分析してうまく対応してくるでしょうね。

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