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【戸田和幸の眼】マンU、負傷者続出もEL制覇。時の流れを象徴する新体制1年目【16/17シーズン査定】

text by 戸田和幸 photo by Getty Images

実は最先端の戦術? 変則的マンツーマンでチェルシー封殺

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マンチェスター・ユナイテッドの16/17シーズン基本フォーメーション

 先ほども少し述べましたが、印象深かったのはやはりチェルシーに勝った試合が挙げられます(第33節 2-0で勝利)。2人のCBのところはジエゴ・コスタに対して常に2対1の数的優位な状況を作りつつ、(エデン・)アザールには(アンデル・)エレーラをつけるなど、他の選手に対してははかなり変則的な形でタイトなマークをする守備戦術を採用していました。

 その試合の約1ヶ月前にもFA杯準々決勝でのユナイテッド対チェルシーが行われましたが、その時もユナイテッドは同じように変則的なマンツーマンディフェンスで臨みました。その時はスタンフォード・ブリッジでのアウェイゲームということも影響したと思いますが、1対1でも後手を踏み続け、なおかつ先に失点をしてしまいほぼ何もできずに終わってしまいました。

 FA杯での経験が生きた部分もあったと思いますが、ユナイテッドにとっては先に点を取れたのが非常に大きかった。加えてオールド・トラフォードでの試合ということで選手たちのモチベーションは非常に高く、1対1の戦いも粘り強く逞しかったです。(ネマニャ・)マティッチのパスがエレーラの腕に当たったところからのカウンターで先制できたという幸運もありましたが、90分に渡り非常に高い集中力とタイトなマーキングをベースにした戦いを見せての快勝でした。

 しかしアーセナルに完敗した試合(第36節 0-2で敗戦)ではELに照準を合わせメンバーも変えた中、モチベーションも高くは見えず非常に中途半端な守備となり、(アレクシス・)サンチェスや(メスト・)エジルに好きなように振る舞わせてしまっての敗戦でした。

 マンツーマンでの守備をするということは必然的に1対1での強さが絶対条件となりますから、モチベーションやコンディションが大きく影響します。さらには自分のマークを見ながらいつ味方のカバーに行くかといった判断力も必要となります。

 マンチェスター・ユナイテッドだけではなく、例えばEL準決勝で苦しめられたスペインのセルタや昨シーズンのイタリアでマンツーマンディフェンスをベースにしたアグレッシブなサッカーでセンセーショナルな戦いを見せたアタランタなど、ここにきてマンツーマン戦術が戻ってきているというか、より人を意識した守備が見られるようになってきています。

 常に動きながら攻撃を仕掛けてくる相手に対してゾーンディフェンスでのマークの受け渡す作業は、ユベントスに代表されるような相当に高いレベルの能力+個人戦術が備わっていないと難しくなってきています。

 これまでの歴史を振り返っても常に戦術のトレンドは変わってきたわけですが、攻撃の戦術が非常に複雑で多彩なものになった今、その攻撃に対しより効果的な守備戦術としてマンツーマンという方法が戻ってきているのではないかと見ています。

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