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Jリーグ 7年前

C大阪・杉本健勇が迎えた覚醒の時。自身初の2桁ゴール。遠回りして、強くなったセレッソ愛

text by 藤江直人 photo by Getty Images

もがき苦しんでいる古巣の姿。あえて選んだJ2でのプレー

 ウルグアイ代表のFWディエゴ・フォルランの加入で注目を集めた2014シーズン。二度の監督交代を強いられるなど、セレッソは混乱を極めた末にJ2へ降格した。シーズン途中で柿谷がスイスのバーゼルへ移籍。オフには杉本と南野拓実(ザルツブルク)もチームに離れた。

 しかし、翌2015シーズンのJ2開幕戦を、杉本は観戦に訪れている。前日の横浜F・マリノス戦で、新天地フロンターレでのデビューを飾ってから約24時間後。東京ヴェルディのホーム、味の素スタジアムへ足を運んだ後の心境の変化を、玉田社長は「勝手な想像ですけど」と断りを入れながらこう推察する。

「あの試合は先制されて、フォルランのフリーキックで何とか引き分けた試合でしたけど。自分がいたらもっと点を取れる、と思ったんじゃないでしょうか」

 2015シーズンのセレッソは、かつて鹿島アントラーズを率いたパウロ・アウトゥオリ監督が指揮。しかし、自動昇格となる2位以内に遠く及ばない4位に終わり、しかも1試合を残してアウトゥオリ監督が辞任。大熊清監督体制で臨んだJ1昇格プレーオフ決勝でも、アビスパ福岡の前に涙を飲んだ。

 もがき苦しんでいる古巣の姿が、心の奥底にセレッソへの愛が強く脈打っていることを再確認させたのかもしれない。フロンターレでは6ゴールをあげ、その時点におけるキャリアハイを更新。飛躍を期待させるパフォーマンスを残しながら、あえてJ2でのプレーを選んだ。

 リーグ戦で4位に終わった昨シーズン。J1昇格プレーオフを勝ち抜き、決勝でファジアーノ岡山を1‐0で振り切った試合直後のピッチ。山口、この年から復帰した柿谷とともに、杉本は人目をはばかることなく号泣している。そのときの思いを、山口はこう代弁している。

「曜一朗君や(杉本)健勇を含めて、アカデミー出身の自分たち3人が、セレッソを引っ張っていかなきゃいけないと思っている」

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