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日本代表 7年前

ハリルJ、支配率「4:6」の優位性。明確だった狙い。僅差勝負モノにするリアリズム【西部の戦術アナライズ】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

ピンチの後に…大きかった先制点

日本代表はボール奪取とカウンターに長けた陣容でオーストラリア戦に臨んだ。
日本代表はボール奪取とカウンターに長けた陣容でオーストラリア戦に臨んだ。

 前半20分で日本はハイプレスを諦めて撤退に入る。オーストラリアが支配する予想どおりの展開へ。38分、マシュー・レッキーのシュートがポストに当たって外れる。攻め手のないオーストラリアでも押し込めばそれなりのチャンスはつかめる。しかし41分、長友佑都のクロスをオフサイドぎりぎりで飛び出した浅野が沈めて先制した。

 後半もオーストラリアが攻め込むが、有効な崩しは出来ず。逆にミスを拾った日本がゴールに迫る。大迫のボールを収める能力は傑出していて、チャンスになりそうにない状況でもキープしてタメを作り、逆襲につなげる。82分には原口元気のボール奪取から井手口が豪快なミドルを叩き込み2-0とリードを広げた。

 日本にとって大きかったのは先制点だ。逆に先制されてオーストラリアに引かれ、縦のスペースを消されていたら、「縦に速い攻撃」しかできない日本は選手交代なしには打開できなかっただろう。レッキーのシュートがポストを叩き、少し後に浅野のシュートが入ったのはターニングポイントだった。

 オーストラリアはGKからもパスをつなぐ姿勢をみせていた。日本にプレスさせてロングボールで裏返しにするつもりだったのだろうがフィードに精度を欠き、唯一形になりそうな攻め手も奏功せず。トミ・ユリッチとティム・ケーヒルを投入した後も放り込みに徹することもなく、最後まで日本に脅威を与えるに至らなかった。

 日本、オーストラリア、サウジアラビア、UAEの力が均衡していた今回の予選では、丁寧に相手の良さを潰して僅差勝負をモノにしなければならなかった。UAEに緒戦で敗れた後、リアリズムに徹したハリルホジッチ監督の下でもぎとった予選突破だった。

(取材・文:西部謙司)

【了】

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