フットボールチャンネル

チェルシー、プレミア連覇へ弱点補強。問われる指揮官の人心掌握力と過密日程への対応【欧州主要クラブ補強診断】

現地時間8月31日、欧州主要リーグの移籍市場が締切を迎えた。この夏も各チームで様々な移籍があったが、それぞれ主要クラブの動きはどうだったのだろうか。今回はチェルシーの補強を読み解く。

シリーズ:17/18欧州主要クラブ補強診断 text by 編集部 photo by Getty Images

王者の補強。新たに仲間入りしたチームのために働ける実力派たち

チェルシー
チェルシーにはモラタ(中央)以下、各ポジションの実力派たちが加入した【写真:Getty Images】

 昨季はアントニオ・コンテ監督の就任とともに3バックを導入し、圧倒的な強さでプレミアリーグ優勝を果たしたチェルシー。年間30勝、勝ち点93という好成績を残し、新指揮官のチーム作りのうまさが際立ったシーズンだった。

 そんなチェルシーにとって今夏の移籍市場における最重要タスクは、加入1年目でチームの絶対的な柱となったエンゴロ・カンテの相方探しである。昨季はセスク・ファブレガスとネマニャ・マティッチを対戦相手に応じて使い分けていたが、後者のマンチェスター・ユナイテッド移籍により、重要なオプションをひとつ失ってしまっていた。

 そこで昨季王者が獲得したのは、モナコの躍進を支えたティエムエ・バカヨコと、カンテとレスター時代にコンビを組んでプレミアリーグ優勝も経験したダニー・ドリンクウォーターである。バカヨコは、強靭な肉体と豊富な運動量を武器に中盤を支配するタイプで、まさに指揮官が好む人材である。カンテとの相性も良さそうだ。

 一方、移籍市場最終日に獲得したドリンクウォーターとカンテの2人が成し遂げた偉業については語るまでもないだろう。2年前のレスター奇跡の優勝を知る黄金コンビ復活には大きな期待が持てる。ただしドリンクウォーターは負傷離脱中で、未だチェルシーのユニフォームで2人が並び立つ姿は見られていない。

 昨年王者は着手したのは中盤だけではない。少年時代から20年以上過ごしたクラブを去ることになったジョン・テリーの後継者として、ローマからアントニオ・リュディガーを獲得した。ドイツで身につけた規律やイタリアで磨かれた守備戦術と、生まれ持ったフィジカルの強さを武器に、チームの守備力向上に貢献することは間違いないだろう。

 そして今夏の移籍市場で忘れてはならないのは、コンテ監督がユベントス時代から高く評価するアルバロ・モラタの獲得だ。エデン・アザール、ウィリアン、ペドロと2列目に強力なアタッカーがいるチームにおいて、ゴールを奪うだけでなく、最前線の起点として機能するモラタの存在は大きい。

 コンテ監督の戦術に収まりきらず、退団の意思を表明しているジエゴ・コスタの後釜としても申し分ない実力を備える。唯一の懸念点は、これまで1シーズンを通してビッグクラブの主力として試合にで続けた経験がないことか。ゴールという結果を残してはいるものの、ユベントスでもレアル・マドリーでも途中出場が多かっただけに、高いパフォーマンスを長期間維持できるかが問われる。

 移籍市場終了間際にトリノから獲得したダビデ・ザッパコスタも、すでに質の高さを証明している。国際的な知名度は低いが、チェルシーのウィングバックを務めるのに十分な攻撃力を備えた職人肌のイタリア代表プレーやーは、昨季大ブレイクを遂げたヴィクター・モーゼスとのポジション争いに挑む。

 マティッチ、D・コスタというチームの軸となる選手が抜けた穴は、同じポジションの選手獲得によって最小限に抑えることができた。連覇への鍵は戦術的な柔軟性をいかに身につけていくか、という点にある。

 昨季と変わらない3バックのまま長期間戦い続ければ、当然対戦相手は緻密なスカウティングでコンテ監督の策を潰しにくる。攻守におけるアザール、カンテ、D・ルイス、クルトワという縦の軸は絶対的で、今季も3-4-2-1で戦う上で欠かすことのできない要素でもある。その上で新戦力をチームに組み込みつつ、戦い方や崩しのバリエーションを増やしていければ、より隙のない洗練された集団へと成長できるはずだ。

【次ページ】補強・総合力診断

1 2

KANZENからのお知らせ

scroll top