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Jリーグ 7年前

山田大記、名波ジュビロのさらなる可能性に。磐田復帰後初ゴールから本領発揮へ

text by 青木務 photo by Getty Images

全体練習後、黙々とメニューに取り組む姿

 フィニッシュ自体は難しいものではなかったが、特筆すべきはそこに至る過程だろう。

 櫻内が折り返した時にはまだ、清水の選手は山田を視界に捉えていた。しかし、ボールが横断したところで完全フリーの状態になる。そして、宮崎が利き足で丁寧に叩いた瞬間、28歳はこぼれ球に詰めようと一気に加速。ストライカーのような冷徹さを見せ、誰にも邪魔されることなく勝負を決めた。

 チームメイトの祝福を受けると、沸き立つ磐田サポーターの前でガッツポーズを繰り返した。

 ドイツのカールスルーエから約3年ぶりに復帰し、第26節・浦和レッズ戦で途中出場。続く大宮アルディージャ戦でも79分からピッチに立った。そして、普段の【3-4-2-1】ではなく【4-2-3-1】で臨んだFC東京戦ではスタメンに抜擢された。

 名波監督から「リラックスしながらゲームに入ろう」と送り出されたが、インパクトを残せぬまま57分にベンチへと退いた。指揮官は「後ろの選択が多く、ポストに入ってきてもバックパスのシーンが多い。背後に抜け出す回数は非常に少なかった。正直、出来は良くなかった」と述べている。それでも、国際Aマッチデー明けの清水戦までの約2週間で状態を上げてくることを期待した。

 磐田のキーマンの一人である川辺は、山田がチームにフィットする上で必要なのは「時間」と話している。その言葉通り、今節が近づくにつれてサックスブルーの前10番は積極的なプレーを取り戻していった。

「シュートやファーストタッチと、ボールワークの練習でアイツはコンディションを整えようとしていたけど、キレを増したり持続させるにはスプリント系をやった方がいいんじゃないか。それで今やっている」(名波監督)

 全体練習後、黙々とメニューに取り組む山田の姿があった。IAIスタジアム日本平でのゴールはその成果のひとつだろう。

 試合に出るためには這い上がらなければならない。ドイツから戻ってきたアタッカーにレギュラーは約束されていなかったが、そうした環境を望んだのは他ならぬ彼自身である。

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