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レスター、あまりに拙速な監督解任。組織崩壊すら想起させる、オレ様オーナーの“職権濫用”【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】

成績不振に陥っているチームが監督を替えることで流れを変えようとすることは頻繁にある。だが、まだ猶予を与えても良かったのではないかというケースも少なくない。このほど岡崎慎司が所属するレスター・シティ(イングランド)がクレイグ・シェイクスピア監督を解任したが、これまでの功績を踏まえればこの人事はあまりに拙速と言えそうだ。(文:粕谷秀樹)

シリーズ:粕谷秀樹のプレミア一刀両断 text by 粕谷秀樹 photo by Getty Images

近年は監督に与えられる時間の猶予が短くなっている

レスターの監督を解任されたクレイグ・シェイクスピア前監督
レスターの監督を解任されたクレイグ・シェイクスピア前監督【写真:Getty Images】

 プレミアリーグ第9節、レスター・シティはアウェイのスウォンジー・シティ戦で2-1の勝利を収めた。岡崎慎司も1ゴールを挙げただけでなく、積極的なチェイシングでレオン・ブリットンを封じ、スウォンジーの攻守を分断。

 岡崎の真骨頂ともいうべきパフォーマンスに、マイケル・アップルトン暫定監督も「シンジならやってくれると信じていたよ。攻守の切り替えも素晴らしかった」と絶賛していた。

 監督が解任されたとき、危機感によってパフォーマンスが急上昇するケースは少なくない。昨シーズンもレスターは、クラウディオ・ラニエリ解任→クレイグ・シェイクスピア体制発足という人事により、残り12試合を7勝2分4敗で乗り切っている。

 しかし、この成功は選手、スタッフ間で人望が厚かったシェイクスピアの成せる業であり、だれにでも当てはまることではない。

「まさかシェイクスピアが解雇されるとは……」とアップルトンが言葉に詰まり、ベテランのクリスティアン・フクスも落胆を隠していない。「気持ちの整理がつくまでには長い時間が必要だ」

 それにしても、近ごろは監督に与えられる時間の猶予が短くなっている。マンチェスター・ユナイテッドのジョゼ・モウリーニョ監督が、「長くても5年だろう」と語ったように、サイクルは短期化する一方だ。

 サー・アレックス・ファーガソン(元ユナイテッド監督)やアーセン・ヴェンゲル(現アーセナル監督)のように、20年以上もひとつのクラブを指揮するようなタイプは絶滅危惧種だ。

 15-16シーズンのパレルモ(当時セリエA)に至っては8人も挿げ替え、15年11月に解雇されたジュゼッペ・イアキニは翌年2月に再就任し、わずか3試合でクビを切られている。バカげた人事だ。

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