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吉田麻也と岡崎慎司、プレミアで成功の要因。苦境で培った「しぶとさ」と尽きない向上心

かつてプレミアリーグは日本人にとって遠い憧れの存在だった。しかし、それを2人の選手が変えた。吉田麻也と岡崎慎司である。数々の試練を切り抜け、紆余曲折を経て居場所を勝ち取ってきた2人がイングランドで成功できた要因とはなんだったのだろうか。(取材・文:松澤浩三【イングランド】)

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

プレミア6年目の吉田麻也。チームに欠かせない存在

吉田麻也
吉田麻也はプレミアリーグ6年目の今季、サウサンプトン守備の柱として活躍している【写真:Getty Images】

 プレミアリーグの舞台に立つ2人の日本人選手がともに好調を維持している。

 2012年夏に英国の南海岸にやってきて以来、サウサンプトンで6年目を迎えた吉田麻也。今季は開幕戦でスタメンに名を連ね、ここまでリーグ戦10試合中8試合で先発フル出場、そのうちの4試合でクリーンシートに貢献した。

 8月にはクラブの月間最優秀選手に選ばれた。最近ではキャプテンとして腕章を巻く機会も少なくなく、チーム内での影響力も大きくなった。本人は「長くチームにいるから」と冗談めかすが、プレミアリーグ移籍以降は数々の試練を経験してきた。下地があったからこそ現在の位置までたどり着けたのである。

 1年目は不動のセンターバックとして32試合に出場したものの、2年目以降はジョゼ・フォンテ、デヤン・ロブレン、トビー・アルデルヴァイレルト、フィルジル・ファン・ダイクといったハイレベルなセンターバックたちとのレギュラー争いに勝てず、彼らの後塵を拝する3番手の立ち位置が指定席となる。

 日本代表ではレギュラーCBの座を不動にしながらもクラブレベルでは出場機会が激減。その間には、右サイドバックで起用されたり、左サイドバックでのプレーを経験したり、本人の口から「移籍」の2文字が出てきたこともあった。ロナルド・クーマン政権2年目の2015/16シーズンには、チーム事情から右サイドバックでの起用回数が徐々に増え、出場する確率を高めようと懸命にサイドバックの仕事を研究し続け、一時は「やるからにはレギュラーになるつもりでやる」と意気込んだほどだった。

 しかし5年目の昨季、クロード・ピュエルがサウサンプトンの監督に就任すると、吉田の置かれた状況にも変化が見られるようになる。前半戦はカップ戦を中心にセンターバックとして活躍して実力を示し、フォンテに移籍の噂が出始めるとピュエル監督は吉田をリーグ戦でも重用し始める。そしてそのポルトガル代表が実際にウェストハムに移籍すると、レギュラーの座を掴むことに成功。以降、吉田はサウサンプトンの守備陣で中軸を担っている。

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