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Jリーグ 6年前

鹿島V字回復のキーマン三竿健斗。常勝軍団の心臓部託された21歳ボランチの献身

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「柴崎の穴」は感じさせず。目だたずとも力強い下支え

 ヴェルディ時代は周囲の先輩選手からかけられる声やアドバイスに耳を傾けすぎるあまりに、思い描いていたプレーができない場面も少なくなかった。一転していまでは「自分のやりたいことができている」と、ちょっぴり笑顔を浮かべた。

「以前よりもシュートを打つ回数も増えているし、それは自分のやりたいプレーでもあるので。守備でも自分がやりたいように周りの選手たちを動かすとか、何を言われても特に気にすることなく、ぶれることなくプレーできているので、徐々にですけど、成長できているのかなと思います」

 レッズがACL決勝に進出した関係で、本来ならば18日に行われる明治安田生命J1リーグ第32節が分離開催された5日の大一番でしっかりと勝利を手にした。アントラーズの試合のない18日に2位の川崎フロンターレが敗れれば、その瞬間に通算9度目のJ1制覇が決まる。

 たとえ他力での優勝が決まらなくても、柏レイソルをカシマサッカースタジアムに迎える26日の同33節で勝てば歓喜の瞬間を手繰り寄せることができる。まさにフィニッシュは目前に迫ってきた。

 しかも、大きな付加価値もついてくる。すでに年間23勝をあげたアントラーズは2007シーズンのクラブ記録22勝を更新し、18チーム制となった2005シーズン以降のJ1記録にも並んでいる。

 白星をあとひとつ積み上げればJ1新記録となり、ふたつならば勝ち点を「76」に伸ばし、過去最多だった2015シーズンのサンフレッチェ広島、昨シーズンのレッズの「74」をも更新する。強さを物語る、記録尽くめのシーズンの真っただ中にいる三竿は“いま”を楽しめているのか。

「うーん、半々ですね。緊張感はものすごくありますけど、それでも精神的にはそんなに慌てることなくプレーできている。どうしよう、と思う場面もないし、リラックスできているのかなと」

 ラ・リーガへ新天地を求めた、MF柴崎岳が抜けた穴が心配された今シーズン。それでも通算20個目の国内タイトル獲得へカウントダウンに入ったアントラーズを、柴崎がルーキー時代から背負った「20番」を受け継いだ三竿が決して目立たないながらも、それでも力強く支えている。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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