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R・シルバ、人種差別に屈せずACL決勝で2発「僕の回答はピッチで仕事を見せること」

text by 編集部 photo by Getty Images

ラファエル・シルバ
ラファエル・シルバは自身への人種差別にも屈せず、結果で応えてみせた【写真:Getty Images】

 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝2ndレグが25日に行われ、浦和レッズはホームでサウジアラビアのアル・ヒラルに1-0で勝利。そして1stレグとの2戦合計スコアで2-1とし、10年ぶりのアジア制覇を成し遂げた。

 18日にアウェイで行われた1stレグの後、浦和のブラジル人FWラファエル・シルバは人種差別の被害に見舞われた。自身のインスタグラムに差別的な意味を持つコメントが大量に投稿され、「僕は黒人という尊厳があり、自分の肌の色に完全なる誇りを持っている。僕を傷つけることはできないだろうし、このような低レベルな内容で僕を止めることはできない」と反論。

 さらには浦和がクラブとしてアジアサッカー連盟(AFC)に事態を報告したことも明らかにされていた。

 そんな中、ラファエル・シルバは25日のACL決勝2ndレグ、右足首に負傷を抱えながら先発フル出場し、最終盤の88分に勝負を決定づけるゴールを奪って見せた。勝利への執念を感じさせる伝説的な一撃だった。

 試合後、この1週間で起きた自身への人種差別について問うてみると「何が起きたとしても、これからも自分は同じ人間でい続けたいと思いますし、起きたことは起きたことで、しっかりと切り替えて自分のプレーに集中していきたいと思います」と、毅然とした態度で答えた。

「嫌がらせというのは、僕は個人的に受け止めていないですし、それで僕の心を傷つけることはなかったと思うんです。僕は彼らと同じ人間の1人として生きていますし、僕からの回答として何が一番正しいかというと、何かをするよりもピッチの中で自分の仕事を見せるのみだと思う。もう子供ではないですし、同じようなレベルで返すわけにはいかない。自分はプロとしてピッチの中で見せることができて、とても幸せに思っています」

 ACL決勝2ndレグに合わせて来日していたサウジアラビア・プレミアリーグ関係者は、アル・ヒラルのファンと見られるSNSアカウントからのラファエル・シルバへの人種差別を把握しており、「アル・ヒラルに大怪我していた選手がいたにもかかわらず、笑顔の写真をアップしたことがファンの怒りを買ったのでは。あのようなことはサウジアラビアで決して一般的ではなく、ごく一部の人々によるもの」と分析していた。

 複雑な理由があったにせよ、自らへの心ない声に対し、ゴールという最高の「回答」を示して見せたラファエル・シルバ。アジア制覇でも表情に浮かれた様子は一切なく、すでに次なる戦いへと頭を切り替え、「自分の仕事」に集中する姿勢を見せていた。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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