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Jリーグ 6年前

横浜F消滅の実際。「葬式の日にドンチャン騒ぎ」のようだった天皇杯優勝【フリューゲルスの悲劇:20年目の真実】

シリーズ:フリューゲルスの悲劇:20年目の真実 text by 宇都宮徹壱 photo by Getty Images

「葬式の日にドンチャン騒ぎをしているような気分」

 合併が決まってからのフリューゲルスの試合は、ほぼ観ています。天皇杯に関しては、最初のほうはチケット観戦だったんですけど、準決勝からは申請が下りて記者席で観ていましたね。決勝は、前日の大晦日の夕方くらいから国立に行って、夜中までサポーターに取材をしていました。むちゃくちゃ寒かったですよ(笑)。

 それから(元日の終夜運転の)電車でいったん帰って、お風呂に入って身体を温めようとしたんですが、湯船に1時間つかっても冷え切ったまま。それでもカイロをたくさん持って、再び国立に行きましたよ。

 フリューゲルスの優勝が決まった時ですか? ピッチに降りたり、ゴール裏でサポーターの声を拾ったりしていました。今ほど、記者の動線は厳しくなかったように思います。

 ただ、優勝の感慨みたいなものって、実はあんまりなかったですね。というのも、試合の勝ち負けって、私はあんまり気にしていなかったんですよ。「絶対に優勝する」みたいな視点で観ると、冷静な判断が働かなくなるような気がするので。

 サッカーに限らず、スポーツを観ている時って、目の前の事象を冷静に追いかけることに徹したいんです。だから自分の感情を極力持たず、勝敗にも関心を示さずに取材することに専念していました。

 そのせいですかね、試合内容よりむしろ、当日のサポーターたちの言葉のほうが心に残っています。(サポーターグループ『ASA AZUL』のリーダーだった)川村環さんは「葬式の日にドンチャン騒ぎをしているような気分」って名言を残していました。

(決勝で対戦した)清水サポも「死に水取るのはオレらしかいないから、彼らの最期を見届けることができてよかったよ」というようなことを言っていましたね。

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