川辺駿、磐田で残した103試合の軌跡。名波ジュビロでの3年経て「完成形」へ

2015年からスタートした磐田への期限付き移籍は、異例とも言える3年に渡った。ジュビロ磐田、サンフレッチェ広島両クラブからの発表の通り、川辺駿は来シーズンから広島でプレーすることになる。生まれ育ったクラブにいても成長はできただろう。だが、サックスブルーで過ごしたからこそ得たものもあった。『磐田の川辺駿』はいかにして、自身の価値を高めていったのだろうか。(取材・文:青木務)

2017年12月14日(Thu)10時19分配信

text by 青木務 photo Getty Images
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「アイツがここでやりたいとなったら、いつでもこっちはウェルカムだから」

2018シーズンよりジュビロ磐田からサンフレッチェ広島へ復帰することが決まったMF川辺駿
2018シーズンよりジュビロ磐田からサンフレッチェ広島へ復帰することが決まったMF川辺駿【写真:Getty Images】

 ジュビロ磐田の選手として迎える公式戦103試合目だった。明治安田生命J1リーグ第34節・鹿島アントラーズ戦、川辺駿は溢れる想いをヤマハスタジアムのピッチに全て放出した。序盤からフルスロットルで駆け回り、ボールに食らいついた。チャンスと見るや相手ゴール前へ駆け、何かを起こそうとした。

「アイツ涙流しながら出て行ったんだよ。まあ、感極まる気持ちもわかるし、思い入れも強いけどね」

 名波浩監督は暖かな表情で明かしている。これが磐田でのラストゲーム。そんな思いで川辺はこの一戦に臨んだのだろう。攻守の切り替えは恐ろしく速く、ボールを刈る意欲もいつも以上に高かった。前半、鹿島を圧倒した磐田だが、強い決意と集中力を体現した川辺がチームをけん引したといっても過言ではない。

 川辺はこれまで、『90分の中で何ができるか』に重点を置いてプレーしてきた。「守備をしたから勝てるとは思っていないし、攻撃にどれだけ力を使えるかだと思う」と言う。もちろん、課されたタスクを疎かにするわけではなく、チームの勝利のために自分が何をすべきかを考えている。試合状況に応じて、その場その場で最善の判断を導き出せるのが川辺という選手だ。

 だが、鹿島戦の川辺はいい意味で何も考えていなかった。試合開始のホイッスルが鳴った瞬間から、なりふり構わぬ姿勢で向かって行く。球際のバトルも厭わず、率先して長い距離を走ってスペースを埋めた。かと思えばカウンターでスピードアップし、相手を出し抜く突破からシュートに持ち込んだ。1分1秒も無駄にしない、そんな鬼気迫るファイトを見せたのだった。

 90分間ピッチに立つつもりはなかったのかもしれない。時間の長さより、どれだけ濃密に戦えるかを優先したように見えた。「交代する7分くらい前から足がつっていた」と名波監督が話したように、ベンチに退く時は力を使いきっていた。

「まあ、人間なら借りているものはしっかり返さないと。またアイツがここでやりたいとなったら、いつでもこっちはウェルカムだから。半分水色を着ていると思えば、ね」

 川辺を出迎えた指揮官は、右手を差し出すと力強く抱きしめた。その腕の中で、22歳の若者は何を思っただろう。

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