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明暗分かれたクラシコ。レアルは「消した」はずのメッシになぜやられたのか?【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

メッシ無言の圧力

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コバチッチを引き付けたメッシ。存在感を消して先制点をもたらした

 後半のバルサはMFを横並びの4人としたことで、対峙するレアルのMFが1枚足りない構図が生まれている。コバチッチがメッシに引きつけられるので、どうしてもラキティッチかブスケツがフリーになってしまうのだ。そこへベンゼマが引いてくれば、当然バルサのCBがフリーになるので、そこを経由させて再び前へボールを出せば同じことになる。

 バルサの先制点はブスケツの巧みなキープからのラキティッチへの短いパスが起点だった。フリーになったラキティッチがドリブルでグッと持ち出して右のセルジ・ロベルトへさばき、セルジ・ロベルトのパスをフリーのルイス・スアレスが決めている。

 ラキティッチがスピードアップしたときに外されたコバチッチが追わなかったことで、ゴール前でバルサの数的優位が生まれていた。コバチッチがさぼったわけではない。近くにメッシがいたので、メッシをフリーにしないほうを選択したのだ。

 いつもならスプリントしてゴール前へ向かうメッシは、気配を消したままラキティッチの後方をゆっくりと走っていた。コバチッチが気づいて寄ってくると、そのまま速度を上げずにコバチッチを引きつけた。前半はコバチッチにつきまとわれて存在感を消されたメッシは、存在感を出さないことで先制点を演出したといえる。

 2点目につながるPKもメッシのパスがきっかけ。このシーンはコバチッチにとって不運だった。バルサの攻撃になる直前にメッシがコバチッチに背後からファウルしている。これでコバチッチは一時的に走れなくなり、メッシとの1対1では対峙するので精一杯。メッシから冷酷なパスがルイス・スアレスに渡り、そこからの波状攻撃がカルバハルのハンドにつながっている。

 レアルはベイルとアセンシオの2枚同時投入を準備していたが、10人になってしまったことでDFナチョの投入を優先。その後に再び2枚替えを準備してから実際に交代するまでに4分もかかっている。バルサがボールを支配してずっとインプレーだった。これもレアルには不運だった。交代後には3つの決定機を作ったが決めきれず、逆にバルサはメッシのアシストから3点目。レアルはメッシを消すことに半ば成功しながら、結局は1得点1アシストを許し、間接的に絡んだ先制点も含めるとすべてメッシにやられたことになる。

(文:西部謙司)

【了】

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