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不当なネイマール報道への違和感。根源にはフランスメディアの自虐観? 憶測が招く悪循環

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

あまりに偏ったネイマールに関する報道

パリ・サンジェルマンのウナイ・エメリ監督
パリ・サンジェルマンのウナイ・エメリ監督【写真:Getty Images】

 ネイマールの肩には、移籍金世界最高額である290億円のタグと同時に、『PSGを頂点に導く』というとてつもないプレッシャーがのしかかっている。凡庸な結果に終わったら「金額に見合った働きをしていない」と叩かれるのは目に見えている。

 そのプレッシャーがどれほどのものかは、彼らクラスの選手にしかわからないだろう。少なくとも「ハイ、どうぞ」なんて譲っている余裕はないはずだ。仮にこれがカバーニのPSG最後の試合などであったらちょっとは別かもしれないが、早晩、157ゴール目は生まれていたのだから。

 スタンドにいたファンたちは会場の熱気の中、感情のまま声を出していただろうし、ネイマールの行為に対する感じ方は人それぞれでいいと思う。ただ、PSGに入団してからの彼にまつわる報道に関しては、あまりに見方が偏っている。

「ネイマールほどのビッグスターがリーグ1で満足するわけがない」というやや自虐的な思いが裏にあるかのように。

 年末にもネイマールとエメリ監督の不仲説が話題になったが、火元であるレキップ紙の中身を読むと、『練習中にエメリ監督に声をかけられたのにネイマールは嫌そうにかわした』という内容でがっくりきた。週1回、15分程度メディアに公開されるトレーニングは、クラブハウスのテラスから遠巻きに見る、というだけのもので、とてもじゃないが『反抗的だった』と断定できるところまで観察できない。

 それでも世界的に影響力のあるメディアがこういった記事を発信すると、信ぴょう性のあるものとして受け取られる確率は高くなる。

 この記事にはさすがに、記者仲間たちも「どんな話かと買ってみたらこれで、金返せ、と思った」と失笑していたが……。

 また、リーガからネイマールを引き抜かれたことに対する恨み? から、アンチ・ネイマール報道は、スペイン発が多いとも聞く。前述のディジョン戦での一件についても、『はたしてロナウドがPKを譲ったことがあったか? バロンドールを目指すレベルの選手にそんなことを期待すべきじゃない』と書いていたフランスのメディアもあった。

『ネイマールはPSGでアンハッピーだから移籍を希望』と報じているが、彼がアンハッピーだとするなら、その原因は、憶測だけで報じているメディアにも大いにあることは間違いない。

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