フットボールチャンネル

Jリーグ 6年前

柏FW伊東純也の明らかな進化。日本代表でロシア行きも期待、怖さ増す「スピード+α」

text by 舩木渉 photo by Getty Images

伊東純也の新しい「立ち位置」が持つ意味

 ただ前半は伊東本人も「前半はサイドをうまく使えなかったし、欲しいところにボールがこなかったり、龍(小池龍太=右サイドバック)とのコミュニケーションがあってなかったところがあった」と語る通り、なかなか周囲との呼吸が合わなかった。その部分を修正した後半に3得点、そして全得点に絡んだことを考えれば、新しいポジショニングは非常にポジティブな影響をもたらしていると言える。

 伊東が中途半端なポジショニングをとる理由の1つはチームとして中央からの崩しの質を高めるためだろう。ムアントン戦の前半終盤から見られるようになったのは、クリスティアーノが右サイドに流れて中央にスペースを作り、そこに伊東や新加入のFW江坂任が入り込んでいく形である。

 クリスティアーノが相手DFを引きつけて作ったスペースを使って最終ラインの裏に抜け出せば、一気にビッグチャンスとなる。そして伊東がボールを受けるために一旦引くことでDFを釣り出し、クリスティアーノにスペースを与える形も見られた。まさに62分の2点目の場面がそれである。

 伊東が中央寄りにポジションをとる、あるいは中へランニングすることによってサイドにはスペースが生まれ、右サイドバックの小池が攻め上がるスペースを確保することもできる。「(伊東を)どれだけ楽にできるかだと思うので、そういったところを自分はサポートできれば」と語る小池は「自分が高い位置を取れば相手を押し込める」と、攻撃的なサッカーを展開するうえで右サイドの攻撃の厚みの重要性を十分に理解している。

 左サイドバック、左センターバック、左セントラルMFの3人を同時にケアできる場所に立っていることは、守備面でもプラスに作用する。ボールを奪われた際、伊東の立ち位置からであれば相手の3つのポジションに対してプレッシャーをかけやすい状況が生まれる。これはボールを持つ相手からすれば嫌なはずだ。ムアントン戦ではこれまで以上に高い守備での貢献度も光った。積極果敢なオーバーラップと左足の精度が武器でヴィッセル神戸加入が決まっているDFティーラトンに効果的な攻撃参加をほとんど許さなかった。

 伊東の新しいスタイルは、プレーの幅を大きく広げる。ムアントン戦でもただサイドで縦に仕掛けるだけでなく、中央寄りでボールを受けてターンしてドリブルに持ち込み、スピードで数人を一気にはがすといったプレーも見られた。

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top