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原口元気も離脱。危険な「脳振とう」、どうケアすべきか? 重度の障害招く恐れ

text by 山下祐司 photo by Getty Images,Yuji Yamashita

なぜアメリカはヘディングを禁止したのか?

 世界に先駆けて脳振とう対策としてヘディングを禁止した国がある。それが米国だ。2016年1月から米国ユースサッカー協会が主催する試合や代表育成プログラムで10歳以下の子どもたちのヘディングを禁止した。

 もし、試合中にヘディングすると相手チームに間接フリーキックが与えられる。11歳から13歳まではヘディング可能だが、試合と練習を合わせて1週間に25回までと制限された。州や地域レベルのユースサッカー協会が歩調を合わせ始めている。

 米国でヘディングの一部禁止をスタートできたのは、圧倒的な人気を誇るNFL(アメリカンフットボールリーグ)の影響が大きい。選手同士が激しく接触し、脳振とうの発生頻度が高いアメフトで、過去のスターの人格や行動が引退した後に大きく変わり、自殺など悲惨な結末を迎えたことがクローズアップされた。

 2013年には元選手約4500人がNFLを相手取り集団訴訟を起こすまでに発展。そして2016年にNFLが推定10億ドル(約1090億円)を支払うことで決着がついた。この影響がサッカーにも及んだ。

 2014年に米国サッカー協会などを相手どり訴訟が起こされた。選手の親らが求めたのは金銭的補償ではなく、新たなルールや脳振とう対策プログラムの導入だった。そして、2015年にヘディングの一部禁止などに合意。2016年から導入となった。

 日本では2016年から脳振とう対策としてJ1~J3全試合を映像で残し、後から分析できる体制が整えられた。これまではチームドクターからの報告のみ。これで実際にどんな状況で脳振とうが起きたのかを調べられる。

 とはいえ、まだ代表やJリーグなどトップレベルが脳振とう対策に手をつけ始めた段階。大橋医師は「日本も脳振とうに関しては世界レベルの認識。だから小学生から大学生、社会人にはケアがない状態です。サッカーはすそ野が広いだけに心配」と話す。

 例えば昨年の12月、E-1選手権で代表に招集された清武弘嗣(C大阪)は練習中に脳振とうを起こし、検査を受け代表から離脱した。休息を含めた回復プログラムの実施予定が報じられ、適切に対応されたことがわかる。

 しかし、もしアマチュア選手が脳振とうを起こし、一般的な医療機関で受診したとする。そこでCT画像に異常が認められなければ、ほんの数日の休息だけを伝えられる可能性が高い。

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