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Jリーグ 6年前

食事改革をも要した異質な戦術。J2千葉・2年目のエスナイデル監督が描く青写真

text by 藤江直人 photo by Getty Images

基盤構築の1年目。疑心暗鬼のスタートから掴んだ手応え

 クラブ側の理解を得たうえで、母国に在住する旧知の食のスペシャリストのアドバイスを受けて徹底的に変えた。当然ながら、スタート直後は混乱が起こった。キャンプや遠征で宿泊するホテルの厨房はもちろんのこと、一日の楽しみである食事の光景が激変した選手たちも困惑した。

 開幕直後の来月12日には36歳となる、チーム最年長のMF佐藤勇人が苦笑いを浮かべながら1年前を振り返る。

「なかなか経験したことがなかったので、慣れるまで時間がかかりましたし、どうなるんだろうと最初は疑いながら入った部分もありますけどね」

 エスナイデル監督が掲げるハイライン&ハイプレスは、豊富な体力が必要とされる。未知の戦い方に抱いていた疑心暗鬼な思いは、時間の経過とともに手応えへと変わっていく。開幕直後の昨シーズンのJ2戦線で、新生ジェフの存在はいい意味でカルチャーショックを与えた。

 ときにはハーフウェイライン付近に最終ラインが陣取るがゆえに、圧倒的なボールポゼッションで試合を支配する。ツボにはまったときはめっぽう強いものの、レイソルとのちばぎんカップのように、後半に入って一気に崩れて0対4で負けた横浜FC戦の惨敗もあった。

 さらにはエスナイデル監督をして「調子が乱高下して悪い結果が続き、それまでの戦い方に迷いを生じさせた」と言わしめた中盤戦における苦戦も味わわされた。それでも終盤戦は快進撃を演じ、クラブ新記録となる7連勝でフィニッシュ。6位に食い込み、J1昇格プレーオフへ駒を進めた。

 最終的にJ1へ昇格した名古屋グランパスに逆転負けを喫した準決勝で、スリルと興奮とに満ちあふれたチャレンジの軌跡はいったん幕を閉じた。それでも指揮官は、シーズンを通してハードワークを実践できた土台となった、食事改革の効果に絶対の自信を寄せている。

「選手たちが目に見えて変わった。フィジカル的な部分がまず変わった。僕が要求するトレーニングの内容や強度に対応できる体になってきたし、けがをする選手が圧倒的に少なくなった。常にいいコンディションで試合に臨めるし、疲労の回復も早くなったので」

 ならば、最も変貌を遂げた選手は誰なのか。エスナイデル監督は目を細めながら最年長の佐藤と、就任と同時にキャプテンを任せている、2016シーズンにレイソルから完全移籍で加入していた34歳の近藤の名前をあげている。

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