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Jリーグ 6年前

湘南・曹監督が見抜いた梅崎司の本音。元日本代表が感じた浦和での葛藤と成長への渇望

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「成果がすぐにピッチで表れるような指導」

湘南ベルマーレの曹貴裁監督
湘南ベルマーレの曹貴裁監督【写真:松岡健三郎】

 曹監督自身も新たな刺激を受けて、ヨーロッパ視察から帰国していた。今回のハイライトはイタリア北部の小さな町ベルガモをホームタウンとする、セリエAのアタランタBCを訪ねること。練習を見学し、ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督にぜひとも聞いてみたかった2点を尋ねた。

 徹底した育成主義を伝統としてきたアタランタは、就任1年目のガスペリーニ監督のもと、2016‐17シーズンのセリエAで4位に躍進していた。今年1月に還暦を迎えたイタリア人指揮官は若手の育成だけでなく、燻っている選手の再生にも長けていると、その手腕が広く知られていた。

 ガスペリーニ監督が一番大事にしている指導者としての哲学と、手塩にかけて育てた選手が他のクラブへすぐに移籍する近年の状況をどう思っているかを曹監督は尋ねた。特に後者に対する答えに感銘を受けたと、今月20日に株式会社カンゼンより発売される自著『育成主義 選手を育てて結果を出すプロサッカー監督の行動哲学』のなかでこう記している。

<忍耐強さの大切さを説いた「石の上にも三年」という言葉が日本だけでなくイタリアにもあるが、ガスペリーニ監督は時代が変わってきていると笑いながら語ってくれた。

「成果がすぐにピッチで表れるような、選手たちの努力がすぐにエネルギーに変わるような指導をすることがすごく大事だ」

(中略)今日はこれくらいでまた明日、という考え方は許されない時代になっていると感じずにはいられなかった。明日につながる「いま」を100%やっていかなければ、未来を語れないとガスペリーニ監督は諭すように語ってくれた。>

 アタランタの場合、すでに主力選手の何人かが、来シーズンからインテル・ミラノやACミランへ移籍することが決まっている。日々の指導が正しかった証であり、キャプテンにして「10番」を背負うFWアレハンドロ・ゴメスが成長を遂げ、昨シーズン、29歳にして初めてアルゼンチン代表入りしたことをむしろガスペリーニ監督は喜んだ。

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