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Jリーグ 6年前

鹿島・安西幸輝の“三刀流”。タイトル奪還へ、東京V育ちの22歳ホープが示した可能性

text by 藤江直人 photo by Getty Images

常勝軍団ならではの厳しさ

 エスパルス戦では常勝軍団ならではの厳しさも感じた。パスミスなど雑なプレーが目立ち、シュート数がわずか1本、それもDF昌子源がペナルティーエリアの外から放ったものだけで迎えたハーフタイム。ロッカールームに大岩監督の怒声が響きわたった。

「球際でもっと激しくいけと。リーグ優勝したいのならば、もっと気持ちが乗ったプレーを見せろと。戦術というよりは気持ちの部分をすごく言われました」

 後半開始前のピッチで円陣が組まれたときには、誰かともなく「去年の悔しさを絶対に忘れちゃいけない」という言葉が飛び交った。J1連覇に王手をかけながら、最後の2試合をスコアレスドローで終えてしまい、最終節で奇跡の逆転優勝を果たした川崎フロンターレの引き立て役になった。

 敵地でジュビロ磐田と引き分けた昨年12月2日の最終節後には、ゲームキャプテンを務めた昌子、ヴェルディのひとつ後輩で、EAFF E-1サッカー選手権で日本代表デビューを果たしたMF三竿健斗たちが人目をはばかることなく号泣した。

「その場に僕はいなかったけど、テレビでは見ていたので。そういう点をしっかり認識して、プレーしようと思っています」

 J1デビュー戦をスコアレスドローで戦い終えて、あらためて実感したこともある。昌子と植田直通の日本代表コンビが組む、センターバックを中心とする堅守。42分にはレオ・シルバのファウルで与えたPKを、守護神クォン・スンテが横っ飛びでキャッチ。九死に一生を得た。

 エスパルスのアグレッシブさに慌ててしまい、縦へ、縦へと急ぎすぎた前半には、内田が幾度となく「縦パスを入れないで」と叫び、安西に対しては「横パスを回せ」と要求してきた。相手を焦らすことで、攻め込むスペースを生じさせる狙いがそこには込められていた。

「やっぱり点を取られないですよね。守備という部分にすごくフォーカスされたチームだと思うので、だからこそ僕個人を含めて、攻撃にもっとアクセントをつけられれば。クラブのエンブレムを見たときには重みというものを感じるけど、それをもっともっと背負ってピッチで表現していきたい」

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