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Jリーグ 6年前

クラブ史上初のJ1開幕戦に臨んだ長崎。発足以来すべてを知る番記者の追憶

text by 藤原裕久 photo by Getty Images

先人たちが残した多くの「点」。それをつなぐ「線」の存在

 それでも、そんな無数の記憶や記録の『点』は、どこかでクラブとつながり続けている。11年前、チームリーダーだった原田武男は、今ではコーチとしてJ1開幕戦のメンバーに入らなかった選手たちと、ホーム開幕戦へ向けてトレーニングを行なっている。

 左サイドのアタッカーだった竹村栄哉は強化部長になり、チームの心臓と呼ばれたボランチ、田上渉と共に強化の仕事に走り回っている。そして、当時の試合で湘南対策のアドバイスをくれたのは、クラブ創設時にはアドバイザーを務め、今は監督としてベンチに座る高木琢也その人だ。

 先人たちがクラブへ残した多くの点……。彼らはそれをつなぐ線の存在なのだろう。今回の試合を前に、今もクラブに残る彼らと当時の話をしてみようかとも思ったが、J1開幕へ向かうチームの様子を見て止めておくことにした。

 今も点の最も先……文字どおりの最前線にいる彼らにとって、開幕戦はメモリアルというより激しい戦いのスタートなのだ。試合前に余り感傷的な話をする必要はない。

 J1に昇格したクラブの開幕戦だからなのか、高田明というJリーグで最も有名な社長の存在のためか、昔なら考えもつかなかった数のメディアで埋まった記者席に座る。きっと11年前のメンバーたちも、それぞれ当時とは違う場所で試合を観ていることだろう。

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