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Jリーグ 6年前

クラブ史上初のJ1開幕戦に臨んだ長崎。発足以来すべてを知る番記者の追憶

text by 藤原裕久 photo by Getty Images

ホーム開幕戦の相手は鳥栖。ここにも一つの縁が

Jリーグ屈指の有名社長となった高田明氏
Jリーグ屈指の有名社長となった高田明氏【写真:Getty Images】

 試合は開始後すぐに失点した長崎が、一度は追いついたものの、試合終了残り10分で再び突き放され、J1最初の戦いは黒星で終えた。敗れたとは言え、11年前に比べれば勝つチャンスも多分にあったし、随所に可能性や強さも感じさせてくれた。

 それでも試合後は何とも言えない悔しさが心の中から湧き起こる。11年前に完敗しても誇らしさを感じたのとは正反対だ。

 きっとそれは、11年前の湘南戦が夢の舞台であり、勝敗よりチャレンジすることに意味があったからであり、今回の対戦が自力で辿り着いた現実の舞台で、より高みへ向かうための勝負であったからなのだろうと思う。それはそのまま長崎が成長してきた証拠なのだ。

 取材を終えてスタジアムの外に出た。16時のキックオフだったため、空はもうすっかり暗い。曇り空のために星は見えないが、きっと雲の向こうには無数の星があるのだろう。

 ずっと昔、人は星と星の間に線を引き星座を夜空に描き出し物語を作ったという。この日、長崎はJ1開幕戦という記憶と記録の『点』をまた一つ歴史に刻んだ。今日の試合を観たサポーターたちは、それぞれの中で『点』と『点』の間に線を引いたことだろう。

 そうやって作られた物語たちがクラブの歴史となって次へと引き継がれていくのだ。どこまでいけるか分からないが、クラブの『点』をこれからも追いかけていきたい……J1開幕戦は、あらためて僕にそう思わせてくれるものだった。

 とは言え、いつまでも感傷に浸ってはいられない。何しろ週末にはホーム開幕戦がやってくる。対戦相手はサガン鳥栖。そして、このクラブは、公式戦ではないトレーニングマッチではあるが、クラブが創設後に初めて(2005年5月1日)対戦したJクラブなのである。

 また次の『点』がやってくる。それがきっと次の物語になり、歴史へとなっていくのだ。サッカーは世界につながっているだけじゃない、過去も未来も飛び越えてつながっている。そのつながりこそが、僕らを捉えて放さない理由なのだろう。

(取材・文:藤原裕久)

【了】

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