クラブ史上初のJ1開幕戦に臨んだ長崎。発足以来すべてを知る番記者の追憶

経営危機を乗り越え“奇跡の”J1昇格を成し遂げたV・ファーレン長崎。クラブ史上初のトップディビジョン昇格を成し遂げたクラブが、ついにJ1の開幕戦に挑んだ。クラブ発足からここまでの道程には多くの人が携わってきた。そのすべての歴史を知るライターが、この歴史的な1戦についての感慨を綴る。(文:藤原裕久)

2018年02月28日(Wed)11時00分配信

text by 藤原裕久 photo Getty Images
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J1初戦の相手、湘南ベルマーレとの縁

クラブ史上初のJ1、湘南ベルマーレとの開幕戦に臨んだV・ファーレン長崎のスターティングイレブン
クラブ史上初のJ1、湘南ベルマーレとの開幕戦に臨んだV・ファーレン長崎のスターティングイレブン【写真:Getty Images】

 2月24日、僕は朝一番の飛行機で湘南へと向かっていた。目的はV・ファーレン長崎のJ1開幕戦だ。長崎の開幕戦を観に行くのは、まだJ3の影も形もなかった2005年にクラブが発足してから14回目となる。

 発足当時の長崎が所属していたのは、大雑把に説明するとJ2の下……の更に下、全国に9つある地域リーグの一つ「九州リーグ」で、2009年にJFL、2013年からJ2と戦いの場を移して、ようやく辿り着いたのがこの日のJ1開幕戦だ。

 J1初戦の相手は湘南ベルマーレ。恐らく多くの長崎サポーターにとっては、J2でしのぎを削った相手であり、昨季のJ2優勝チームという認識だろうが、僕にとっては少し違う。「長崎が初めて公式戦で対戦したJリーグクラブ」。それが僕の湘南というチームに対する認識だ。

 対戦したのは、2007年10月7日の天皇杯3回戦、会場は今回と同じ、平塚競技場(現 Shonan BMW スタジアム平塚)。初めて地元のクラブを追いかけて車で関門海峡を渡り、九州の外へと飛び出したときの記憶は今も鮮明だ。

 到着するまでの高揚感や、結果的に0-3で完敗を喫したとは言え、真っ向勝負にいったチームのへの誇らしさ……。それは今も心の中でキラキラと輝き続けている。

 当時の長崎は、専用の練習場やクラブハウスどころか、プロ契約の選手すらまだまだ少ないクラブだった。

 何しろ練習着が揃ったのは前年の2006年。その前までは、仕事を終えたアマチュア選手たちが、薄暗い照明に照らされた土のグラウンドに私物のユニフォームを持ち寄っているような状態で、2007年の時点でもトレーニングは20時開始の夜練習が中心。みんなが公園隅のベンチで着替えをして、夏場には公園の水道を頭からかぶり、練習が終われば全員でグラウンドにトンボがけをする。

 練習後もボールの数があわないときは、選手と見学していたサポーターが一緒になって公園周囲の植え込みを探して回る……そんな日々。「Jリーグを目指すクラブの誕生」という話題性も3年目に入れば新鮮味を失う。特に2006年にJFL昇格に失敗した影響は大きく、それまであったクラブの勢いは明らかに落ちていた。

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