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日本代表 6年前

【岩政大樹×マリ戦】ハリルJに足りなかったワイドな攻めへの対応力。磨くべき世界仕様の距離感

日本代表は23日、国際親善試合でマリ代表と対戦し1-1で引き分けた。この試合ではどんな成果や課題が見つかったのか。2010年の南アフリカワールドカップにも出場し、現在東京ユナイテッドFCで選手兼コーチとして活躍する元日本代表DF岩政大樹に、現役ディフェンダー目線で話を伺った。(分析:岩政大樹、構成:編集部)

シリーズ:岩政大樹×〇〇 text by 編集部 photo by Getty Images, Kenzaburo Matsuoka

マリ戦で露呈したハリル式守備の弱点

岩政大樹
元日本代表DFの岩政大樹が23日のマリ戦のディフェンスを解説【写真:松岡健三郎】

 マリ戦前、日本代表が「最終ラインを高くする」という報道が出ていました。「最終ラインを高くする」というのは、基本的に判断の結果ですので、どのようにして実現させるのかに注目していました。結果的に高くはしたいけれど名分だけ、これまでと大きく変わったところはありませんでした。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の守備のやり方では、対面の相手のマークを掴むところから守備を作っています。基本的に相手の動きに合わせて自分たちのポジショニングを決めていくので、特にサイドで高い位置を取られると必然的にライン設定も高くはなりません。

 大きな変化がない中でも、立ち上がりにはサイドの久保裕也選手や宇佐美貴史選手が、相手の4バックのセンターバックにプレッシャーをかけていくような場面が見られました。彼らは本来サイドバックを見ていますが、何度かそれを捨ててセンターバックまで出ていっていました。そうやってズレて守備をすることができれば、結果的に最終ラインが高くなるんです。

 このやり方をしている時は比較的前からプレッシングにいけていましたし、押し込むことができていました。ですが、時間を追うごとに久保選手と宇佐美選手はサイドバックを掴んで、大迫勇也選手と森岡亮太選手が2人で前に並ぶような形になっていきました。相手のボランチが下がって3バックのような形でボールを回すようになり、それに対して2人で追っていくので数的不利になります。

 そうすると両サイドが下がります。基本的に中盤とディフェンスのラインはサイドを起点に決まってくるので、サイドが下がることによってサイドバックも下がるとなると、そこから最終ラインが高くなりようがありません。それによってどんどん全体が下がっていってしまい、全体で連動してボールを奪いにいくシーンはどうしても作りづらくなりました。

 ただ、この戦い方は「仮想セネガル」とはあまり関係ないと思います。ワールドカップ前にアフリカ勢との試合がもう一度ありますし、そもそも今回はヨーロッパで行われている試合で、セネガルに対して「こうやって戦います」というのを、ハリルホジッチ監督が全て見せているとは思えません。

 そもそもワールドカップ本番とはメンバーも相手も違いますので、あくまで選手たちの感覚、特にアフリカ勢の速さや強さ、足が伸びてくる感覚が「仮想」なだけであって、この戦い方をそのままセネガル代表にぶつけるとは思えません。一般的な監督さんが考えることを想像すると、本番仕様の戦い方をここで披露するはずがないですからね。

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