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日本代表 6年前

「どういう選考基準か…」 武藤嘉紀の苦悩。暗転は2年前、復活遂げるも厳しく【日本代表当落線上の男たち】

シリーズ:日本代表当落線上の男たち text by 元川悦子 photo by Getty Images

「まずは自分自身のゴールとマインツの残留に全てをかけて」

武藤
武藤嘉紀は日本代表での返り咲きを目指しつつマインツの残留のために全力を捧げる【写真:Getty Images】

 しかしながら、今回の3月の欧州遠征2連戦で日本代表は抜本的な改革が求められる状況に陥った。軸となるメンバーは変えられないものの、点の取れるアタッカーは喉から手が出るほどほしい。左サイドを主戦場とする中島翔哉(ポルティモネンセ)がフィニッシュの迫力という武器を前面に押し出してロシア行きの有力候補に躍り出たように、武藤もマインツで傑出した存在感を示せば、ひょっとすれば再びチャンスを与えられるかもしれない。

「もちろんワールドカップに行きたい気持ちはありますけど、まずはマインツを残留させること。ワールドカップのためにサッカー選手になったわけじゃないし、ワールドカップがなくてもこれからもサッカー人生は続いていくので、とにかくひたむきにガムシャラに最後まで粘りますけど、まずは自分自身のゴールとマインツの残留に全てをかけて、そこから(ロシア行きを)見てみたいなと思いますけどね」

 マインツでの活躍の先に日本代表がある。武藤はその思いを常に頭に入れながらリーグ戦の残り試合に挑むつもりだ。とはいえ、直近5戦未勝利のマインツのチーム状態は芳しいとは言えない。3月17日のフランクフルト戦でも、途中出場した武藤にボールが入るシーンは非常に少なく、流れを作るために下がってパスを受け、起点を作るなどの工夫を試みていた。

「今のチームでゴールを一番取ってるのは僕。それなのにベンチからになってしまう。しかも攻撃においてはロングボール一辺倒、自分を190cmの選手だと思ってるようなサッカーをする。後ろもイライラします。だからこそ、自分が下りて、相手の間に顔を出してつないでいけば、何度かチャンスが増えていくと思う。

(サンドロ・シュワルツ)監督は『前に張ってろ』『DFとDFの間にいろ』と言ってるけど、裏に行くのもバレやすい。1個下がって走るとDFもどっちにつくのか迷いが生まれるから、そこでチャンスが生まれる。僕はそういうのを続けていった方がいいのかなと思います」

  今季前半戦の武藤はシュワルツ監督の指示通り、攻撃に深さを出すために高い位置に張って深みを取るプレーをして、それもある程度は機能していた。ところが現在は中盤からのサポートがなく、全体が間延びした状態になっているため、FWが孤立している。そういう状況だからこそ、時に手前に引いて縦パスを引き出すことも有効になってくる。武藤の言わんとしているところもよく理解できるのだ。

 ハリルジャパンの1トップも同じように「前にいろ」と要求されて、苦悩することが多い。杉本もどうしたら自分らしさを出せるか模索を続けているようだ。仮に武藤がマインツで試みている自分流を成功させ、シーズン二桁得点とチームの残留を達成させたなら、日本代表でも自分で考えて戦える戦力になれる。今の日本にはそういう人間が不足しているからこそ、武藤への期待は高まる。今月1日のボルシアMG戦は故障で欠場したようだが、本当の巻き返しはここから。シーズン終盤戦の爆発を楽しみに待ちたい。

(取材・文:元川悦子【ドイツ】)

【了】

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