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日本代表 6年前

「どういう選考基準か…」 武藤嘉紀の苦悩。暗転は2年前、復活遂げるも厳しく【日本代表当落線上の男たち】

シリーズ:日本代表当落線上の男たち text by 元川悦子 photo by Getty Images

全てが暗転した2年前の大怪我。復活を遂げたが…

 そもそも武藤はハリルジャパン発足時にはFWの柱になるべき存在と見られていた。2015年は継続的に招集され、マインツ移籍後の同10月のイラン戦(テヘラン)でゴールを挙げた時はヴァイッド・ハリルホジッチ監督も岡崎に並ぶ1トップとして大きな期待を寄せていた。

 本人もそのつもりでいただろうが、シナリオが狂ったのが2016年2月のハノーファー戦での右ひざ外側側副じん帯の部分断裂だった。残りのシーズンを棒に振り、翌2016/17シーズン前半戦も右ひざの負傷が再発して出番を失った。

 そのタイミングで日本代表はロシアワールドカップアジア最終予選に突入。ハリルホジッチ監督は岡崎や浅野拓磨(シュトゥットガルト)、本田圭佑(パチューカ)を1トップに据えて最適な形を模索し続けていたが、2016年11月のサウジアラビア戦(埼玉)で大迫が文句なしのパフォーマンスを見せると、そこからは彼を大黒柱に据えるようになった。

 武藤は2017年に入って完全復活を遂げ、2016/17シーズンのマインツ1部残留の原動力になるなど、目覚ましい働きを見せた。だが、ハリルホジッチ監督は昨年5月末に行われた海外組のみの合宿に彼を呼ばず、信頼の低下を如実に示すようになる。

 2017/18シーズンに入ってからも武藤は序盤からゴールを重ね、好調を維持していたが、昨年8月のオーストラリア戦(埼玉)でのベンチ外など冷遇を受け続ける。同10月のニュージーランド戦で久しぶりに出番を与えられと思いきや、ポジションはマインツとは異なる左サイド。続くハイチ戦も乾貴士(エイバル)との交代で左サイドでのプレーを強いられており、「日本代表では1トップではなく左サイド」という難題を突きつけられたのである。

「1トップで勝負したい」と武藤はたびたび口にしていたが、ハリルホジッチ監督の中では大迫、杉本、小林の方が優先。ドイツで5シーズンを過ごし、2014年ブラジルワールドカップ経験者でもある大迫は実績面で勝るにしても、国内組とは国際経験の差が違う。バイエルンやボルシア・ドルトムントなどの各国代表クラスと毎週のように対峙している武藤の方がワールドカップ基準を体感しているのは確かだろう。

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