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日本代表 6年前

なでしこはW杯への切符掴めるか。猶本光が語る「いい守備」の重要性、直面する世界の壁

text by 舩木渉 photo by Getty Images

世界の進歩に取り残されつつある日本。アルガルベ杯で直面した現実

 もちろん世界的にも女子サッカーのレベルは著しく向上している。昨年のEUROでは、ドイツやフランスといった列強国を抑え、オランダが優勝、デンマークが準優勝に輝いた。欧州ではスペインやポルトガルなども着実に力をつけているし、他にカナダやオーストラリアなどの存在感も大きくなってきている。

 2011年に日本がワールドカップを制した頃から、なでしこジャパンのサッカーは研究され、他国に模倣されるようになった。それから世界の国々は、それぞれのサッカーを独自に発展させてきている。フィジカルに優れた選手たちがロングボールを蹴って一斉にゴールに襲い掛かるようなサッカーばかりの時代は終わり、戦術的に統制のとれたスキルフルなサッカーが主流になり、同時に日本の相対的な地位も下がっていったと見ていいだろう。

 そうした傾向は今年のアルガルベカップでも見られた。高倉監督が率いたなでしこジャパンは、グループリーグで欧州王者のオランダに2-6という屈辱的な大敗を喫した。デンマークやアイスランドには勝利したものの、いずれも辛勝というべき内容。そして5位・6位決定戦でカナダに0-2の力負けを喫した。

 アジアカップ本番仕様に近い今年3月のアルガルベカップの時点で、なでしこジャパンが露呈したのは組織としての完成度の低さだった。これまでであれば考えられないようなことだが、攻撃では崩しが個々のひらめきやテクニックに頼りがちになり、守備でも連動性を欠く場面が多かった。

 特に失点後や流れの悪い時間帯のアクションが芳しくなく、チーム全員が共通意識を持って組織的に修正していくための戦術プランの柔軟性に乏しかった。ピッチ上でプレーの方向性を変え、試合の主導権を引き寄せることができないのである。それでも高倉監督は「攻守共に少しずつではありますが、進歩はしていると思っています」と語る。

 とはいえ攻撃面では「アルガルベカップではある程度方向性を示し、少しゴール前に入っていく回数が増えたと感じています。あとは決定力が上がってくれば、得点でチームが落ち着いて、もう少し落ち着いたゲーム運びができる」と課題も認識している。

 反対に守備面では「失点の多さ」をアルガルベカップ以前から続く問題点に挙げ「失点の内容を見ると、ほとんどが集中力の切れたミス絡み。チームとしての勝ちにこだわる執念というか、以前のなでしこが持ち合わせていた勝利への気持ちが自分たちのチームには欠けていると思います」と分析した。

 確かに攻守ともミスは多い。だが「決定力」や「集中力」「執念」といったあいまいな言葉で、チームの課題を片づけてしまっていいのだろうか。もちろん、ここぞの場面で落ち着いてゴールを決められることや、勝利にこだわる姿勢が重要なことには変わりないが、別のアプローチで解決できる問題でもある。

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