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Jリーグ 6年前

湘南とライザップを結びつけた「育成主義」。選手の潜在能力を引き出す指導哲学との融合

text by 藤江直人 photo by Getty Images for DAZN

「人は変われる。」を証明する

山根視来
山根視来もチョウ・キジェ監督の言葉に動かされた1人。湘南ベルマーレが新たな形になっても感謝の気持ちは変わらない【写真:Getty Images for DAZN】

 迎えた今季は、V・ファーレン長崎との開幕戦でJ1デビュー。以来、3バックの右ストッパーの座を譲っていない。アントラーズ戦では鋭い出足から相手のクリアをインターセプト。そのまま前へ抜け出して右足を振り抜き、最後の最後まで走り切る「湘南スタイル」を具現化させた。

「試合前にチョウさんからも『今日は注目される試合になる』と言われていました。(ライザップグループとの話は)昨日、眞壁会長から聞きました。チャンスをいただいていると思いましたし、いままでの歴史があったからこその話なので感謝しながら、ここからさらに大きく成長していきたい」

 曹監督が著した『育成主義』の第2章・育成論は約100ページが割かれ、アントラーズ戦で活躍した岡本、杉岡、そして山根と真正面から向き合ってきた濃密な日々が綴られている。まさに「『人は変われる。』を証明する」が実践された末に、開幕戦以来となる勝利で新たな門出に花を添えた。

 山根のゴールの直後に試合が終わる劇的な幕切れに、スタンドで観戦していた松岡室長をはじめとする、ライザップグループ関係者も興奮醒めやらぬ様子だった。松岡室長によれば、今月初旬の会談の席で、チョウ監督は新体制のもとで目標を成就させる前段階として、こう訴えていたという。

「湘南というチームが面白いサッカーをすることが、一番大事だと強調されていたんですね。まずはやっている選手が面白いと思うこと。もうひとつは見ている子どもたちが面白いと感じ、このプレースタイルのもとでやってみたいと思われること。さらに相手チームのファンが見ても、サッカーに興味がない人が見ても、さらにいえば海外の人が見ても面白いと思うサッカーがあるはずだと」

 指揮官が「面白い」の定義として掲げた、すべての条件を満たすかのような手に汗握る一戦は、DAZNだけでなくNHK BS1でも生中継されていた。長く灯されてきた「育成」の2文字は2018年4月7日を経て、湘南の海を照らす輝かしい光へと昇華していく。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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