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バルサ逆転敗退の衝撃を生んだ要因とは? ローマが構築した完璧なプランと指揮官の英断

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

合理的だったローマの守備。攻撃ではエースが躍動

 ディ・フランチェスコ監督に言わせれば、彼らこそが守備においての最重要ポイントだったという。試合後「バルセロナには、攻撃の幅を取らせないことが最も重要だと考えた」と地元メディアに明かしたが、前線の攻撃を封じる根元はここにあると見たということだ。

 パスワークで相手の守備陣を横に拡げ、できたスペースをメッシやスアレス、またアンドレス・イニエスタに使わせるのがバルセロナのサッカー。その前提条件を作るサイドを介した組み立てを、ハイプレスで壊したのである。

 ナインゴランやシックのプレスに阻まれ、横にボールが展開できないバルサのセンターバック陣とセルヒオ・ブスケッツは、仕方なしに縦パスに逃げる。しかしメッシが中盤に落ちてボールを受けようとすると、ローマの3人のセンターバックのうち1人が飛び出してスペースを潰す。試合を通じバルサの枠内シュートをたったの2本に抑えていたのは、前線にボールが来る前に組織で遠ざけた結果だったのだ。

 次に攻撃。ハイプレスでパスコースを限定し、セカンドボールをことごとくものにしたローマは、サイドのスペースを使った縦への速攻でバルセロナを攻略した。サイドの守備を受け持ったナインゴランやシックは、攻勢に回るとサイドからやや内側に入ったスペースをフリーで確保。彼らを経由してアレクサンダル・コラロフとアレッサンドロ・フロレンツィの両翼が上がり、バルサの脆いサイドの守備を突いた。

 そして前線には、ジェコという強力なターゲットマンがいたことがローマの強みだった。DFを背にしても苦なくボールをキープする一方、サイドに流れて裏のスペースも突ける走力も備えるボスニア・ヘルツェゴビナ代表FWは、2ゴールをひねり出す上で決定的な存在となった。6分、裏に走ってダニエレ・デ・ロッシの縦パスを引き出して先取点。そして58分には、ピケをエリア内まで引きずったのちファウルを誘い、PKを獲得した。

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